総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済は、2011年5月〜7月にかけて、施設給食、宅配、小売、卸における高齢者向け食品の動向と介護食品市場について調査を実施し、その結果を報告書「高齢者向け食品市場の将来展望 2011」にまとめた。
調査結果によると、2010年の介護食市場は978億円、また、2011年見込みは1,036億円で、前年比105.9%、さらに10年後予測は1,577億円で2010年約1.5倍と予測している。
今回の介護食市場は、流動食、やわらか食、栄養補給食、水分補給食、とろみ剤・固形化補助剤(以下:とろみ剤)を対象とした。市場は2011年に1,000億円を突破する見込み。
また、個別にみても各品目とも中長期的に成長が続くと見られるが、流動食ととろみ剤は価格競争の激化により単価が低下しており、成長率の鈍化が予測される。一方で、やわらか食はムース食の浸透により市場が活性化しており、栄養補給食はゼリーやムースなど、バリエーションの開拓により需要喚起が進んでいる。
品目別比率は、市場の70%弱を流動食が占めており、とろみ剤が10%強、やわらか食と栄養補給食が10%弱と続いている。2021年には流動食が60%に落ち、やわらか食と栄養補給食が15%に上昇するが、とろみ剤は2010年と同水準にとどまると予測される。
従来、嚥下(えんげ)困難者には、キザミ食やミキサー食にとろみ剤を使用することで嚥下しやすくしていたが、ムース食(やわらか食の一つ)の投入により切り替えが進み、やわらか食ととろみ剤は競合関係にある。また、流動食は完全栄養食として利用されるが、栄養補助用途でも採用されており、栄養補給食と競合している。
高齢化の進展という要因だけでなく、流動食やとろみ剤といった従来からの介護食の底堅い需要と、嗜好性や簡便性を訴求した新しい介護食の普及により、新たなユーザーや利用シーンを獲得することで市場は拡大し、2021年には1,577億円に達すると予測される。
なお、介護食は、施設向けとして市場が形成されたため、需要も施設向けが9割を占めているが、要介護者の増加により、在宅介護の需要は年々拡大すると予測される。在宅向けのチャネル別市場は、通信販売が8割近くを占める。現在はカタログ通販が主流であるが、今後インターネット通販の伸びが見込まれる。通信販売の他に小売店舗でも販売されているが、回転率の低さから量販店などは試験的に取扱いを開始しても時間の経過とともに棚が縮小されるケースが多い。しかし、2010年頃よりドラッグストアで取扱いを増やすケースが増えつつあり、今後の拡大が期待される。
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