9月11日、NPO法人ホッとスペース中原の金山峰之氏が代表を務める「Link(リンク)スペース」の第6回のイベントが開催された。昨年4月から始めた取り組みで、「ワールド・カフェ」という対話の手法を用いて、ケアに関わる人が集まり話し合う場をつくろうというもの。これまでに延べ約200人もの人が参加しており、この日は約40人が参加した。
「介護に携わっている人はそれぞれに想いを持っています。でも、想いを持っているがゆえにぶつかる場面もあり、人間関係に頭を悩ませたりと、とてももったいないと感じていました」。金山氏は開会に伴って、「Link スペース」というオープンな語らいの場をつくった理由について、こう説明した。
そこで、ワールド・カフェは、会議室のような閉ざされた緊張感のある空間で話し合うよりも、カフェのようなオープンな空間で、テーブルを挟んで気軽に話し合ったほうが、より創造性に富んだ会話ができ、お互いの知識や考えの交換、関係性の構築が進むという考えに基づいてできた方法だ。
Link スペースでは、次のような方法で進められた。
1)1テーブルを4〜5人で囲み、それぞれが自己紹介を行う
2)テーマに基づいて、対話をスタート
3)対話終了3分前に、そこでの気づきをマイメモに書き込む
4)テーブルに一人を残して、他の人は別のテーブルに自由に移動
これを1セッションとして3回繰り返し、2回目、3回目の対話では自己紹介の後に、前回から残っていたメンバーが前回の対話内容を紹介。テーブルには、模造紙が敷いてあり、「大切なこと」「超重要なこと」「ふと思い浮かんだこと」を色を分けて自由に落書きができるようになっている。また、テーブルには手のひらサイズのボールが1つずつ置いてあり、話をする人がボールを持ち、まさにキャッチボールのように、ボールを渡しながら会話を進めた。こうすることで、話しすぎていないか、話していない人がいないかが視覚的にも感覚的にもわかりやすくなるのだ。
この日のテーマは、「人間性とはどうすれば身につけられるだろうか?」。
初対面、初参加同士が多いテーブルでは、開始直後は「人間性って難しいですね」「何から話せばいいかわかりませんね」と、緊張感が漂っていたものの、テーブルに置いてあるお菓子やカフェという空間、金山氏の場を和ませる進行ぶりも手伝って、それぞれが伝えたいメッセージや共有したいエピソードを次第に出し合うようになり、いつの間にか、どのテーブルもアットホームな対話で包まれていた。
私が参加した1回目のテーブルは、介護職の方のほか、障がい者の生活支援に携わっている方、デーサービス事業のマネジメントを行っている方というメンバーで、「最近では『介護に興味がある』『介護をやりたい』という人だけではなく、『仕事に困らないから』という志や想いの低い人も増えてきているのではないか」「高齢者の個別性をもっと考えるべきでは」といった意見が出ていた。
次のテーブルは、ケアマネジャー、介護福祉士、管理栄養士というそれぞれ立場の異なるメンバー。ここでは、「その人自身が『人間性を身につけたい』と求めていること、意識すること」、「一人でいても変わらない。人と会って影響を受けること」、「嫌いな人も含め、いろいろな立場、考えの人の話しを聞くこと」といった自身の意識、行動が大事という意見のほか、「働く環境、施設長、企業のカラーにもよる」といった、環境要因に関するコメントも出た。
偶然にも、介護福祉関連の団体代表者が集まっていた最後のテーブルでは、「人を人として認めていく」、「その人それぞれが目標を持てるように理念を伝える」、「(仕事、事業の)全体像を見せて、一人ひとりの意味づけを伝える」、「チームで共有する」、「考える時間、気づく時間を持つ」といった、違う観点からの意見も交わされた。
■関連記事
・制度スタート時に比べ、ケアマネは変わった――白澤教授セミナー2
・介護の根本は言葉――セミナーレポート2