東北大学大学院医学系研究科代謝疾患医学コアセンター・片桐秀樹教授、分子代謝病態学分野・宇野健司助教、岡芳知教授らのグループは、8 月9日、太っていくにつれて血圧が高くなるメカニズムを解明したと発表した。
過食などの生活習慣にもとづく肥満は、糖尿病・高血圧・高脂血症を併発しやすいことから、これらはまとめてメタボリックシンドロームという一つの症候群と考えられている。メタボリックシンドローム患者は、動脈硬化を生じやすく、患者数の急増と相まって、医学的にも社会的にも大きな問題となっているが、同研究グループは、肝臓に脂肪が蓄積するのに応じて発せられる神経シグナルが肥満の際の血圧上昇に関わることを発見。メタボリックシンドロームの主徴候である高血圧が生じるメカニズムを解明するに至った。
過食の際、体は代謝を活発にして、すぐには体重が増えないですむようにしている。研究グループは、以前、動物実験により、肝臓に脂肪が蓄積するのに応じて発せられる神経シグナルを発見。また、この神経シグナルが、過食時に交感神経活動を高め代謝を活発にすることにより、体重をすぐには増やさないですませるようにするメカニズムであることを示した。今回は、さらにこの研究を発展させ、肥満マウスでこの神経シグナルを遮断すると、血圧上昇が起こらないことを見出した。このことなどから、この神経シグナル自体が、肥満の際の血圧上昇に関わることを発見した。
肝臓はカロリー摂取に応じ脂肪蓄積量をダイナミックに変えることができることから、肝臓がカロリー蓄積のセンサーとして働き、過栄養時に基礎代謝を活発にして体重が増えないように調節していると考えられる。しかし、このカロリー過剰状態が持続している飽食の時代においては、この体に備わったフィードバック機構自体が、皮肉にも、交感神経の活性化を持続させてしまい、高血圧を発症させることにつながっていることがわかった。この研究成果は、メタボリックシンドロームの本態や、その概念を明らかにするとともに、発症機序に基づいた新たな治療法の開発にもつながるものとして、大いに期待される。
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