ケアマネ不要につながる危機的状況――白澤教授セミナー1

8月12日、株式会社大塚商会と株式会社ワイズマンの主催で、スキルアップセミナー2011が開催され、「平成24年4月介護保険制度改正について動向をさぐる」をテーマに、桜美林大学教授・日本ケアマネジメント学会副理事長の白澤政和氏が講演を行った。

セミナーの冒頭、白澤氏は「今回の改正に向けた議論において、一部ではケアマネ不要論が聞かれる」と伝え、「この会場のなかにも、ケアマネジメントは必要ないと思っている人もいるだろう」と語った。その上で、「『ケアマネとは何か?』という本質的な議論をしなければいけない」と訴えた。

白澤氏は、ケアマネジメントには、「介護保険の枠外の仕事がいっぱいある」と強調する。その一例として紹介してくれたのは、2004年の新潟県中越地震のときの、あるケアマネジャーのことだ。「そのケアマネジャーには、気になる利用者がいた。老夫婦で人工呼吸器をつけていて、当日はライフラインが壊れていたために連絡が取れなかったが、翌日、命は救われていることがわかった。助かったのは、1回目のサービス担当者会議で、消防署職員や民生委員にも来てもらい、万が一の時には助けてほしいということ、○○病院に搬送してほしいということを事前に伝えていたからだ」。

こうしたエピソードを紹介した上で、「ケアマネの仕事とは、保険内ではなく、もっと広いもの」と主張した。

続いて、次期介護保険制度改定については、次々と課題を指摘。

まず、法改正の中核となっている「地域包括ケア」については、「昔から言われていること」、「いい理念」と述べた上で、「地域包括ケアの新たなメニューを実現するには、財源を増大させ、支給限度額を上げなければ、机上の議論で終わる」と厳しい意見を述べた。

さらに、地域包括ケアの目玉サービスである、「24時間地域巡回型訪問サービス」、「お泊りデイサービス」、「複合サービス」についてもそれぞれ言及。まず、お泊りデイサービスに関しては、「都内で200か所くらい行われているが、事故も多く、なかには長年滞在している人もいて、サービスはピンきり。結局、目玉にはなれず…」と指摘。

地域包括ケアの核である24時間地域巡回型訪問サービスについては、「『お金がないときに、こんなことを考えるのか…』というのが正直な想い」と率直な考えを明らかにした。「自宅で過ごしながらいろいろなサービスを選べて、なおかつ安心、安全が担保されるのが本来のあり方だが、自宅を施設化するようなもの」と、問題点を指摘した。

また、24時間地域巡回型訪問サービスにしても、複合サービスにしても、「サービスのパッケージ化」であると指摘し、「ケアマネにとって危機的な状況がつくられていると認識することが大事」と、警鐘を鳴らした。

こうした課題をふまえた上で、白澤氏は、「本来なされるべき介護保険法見直しの論点」として次の4つを掲げる。

(1)財源負担割合の見直し
(2)要介護認定制度の見直し
(3)介護予防制度の見直し
(4)地域包括支援センターの見直し

このうち、要介護認定制度に関しては、「ケアマネジャーの経費とほぼ同額の2,800億円が使われている」と指摘。さらに、認定の評価項目は身体機能に限定されていて、環境面が考慮されていないなど、認定の中身にも問題があるとした上で、必要性自体にも疑問を示し、「将来的には廃止できるように」と語った。

――白澤教授セミナー2へ続く

大塚商会
ワイズマン
日本ケアマネジメント学会

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