8月12日、大塚商会とワイズマン主催で開催されたセミナーで、桜美林大学教授・日本ケアマネジメント学会副理事長の白澤政和氏が講演を行った。
「介護保険制度改正について動向をさぐる」をテーマに、講演の後半では、白澤氏が考える地域包括ケア、ケアマネジメントのあり方について伝えた。
白澤氏は、ケアマネジメントの目的は、「利用者のQOLを高める」、「利用者の能力を高める」、「利用者のために事業者に弁護する」といった“利用者のため”と、「財源を守っていく」ためという両面があると指摘。ところが、「5年前頃から、財源抑制機能が強くなってきた」(白澤氏)。
「前回の法改正で、介護保険スタート時とは、ケアマネは変わった。『回数を減らせ』、『ベッドを返せ』と言わざるをえなくなって、利用者さんに国の回し者だと思われたり、ケアマネ自身も仕事が楽しくなくなったのでは?」と問いかけると、多くの参加者が頷いていた。
白澤氏が今後のケアマネジメントの方法として紹介したのが、「ストレングス(強さ活用)モデル」。「○○ができない」、「意欲がない」、「自信がない」、「好みがない」、「地域から孤立している」など、マイナスから利用者を捉えている人は多い。
一方でストレングスモデル・ケアマネジメントとは、前述のようなマイナス面だけではなく、「○○ができる」、「○○をする自信がある」、「○○をしたい」、「○○が好きである」、「○○をしてくれる人がいる」といったプラス面もアセスメントし、ケアプアンに反映させるという方法という。
「マイナス面に着目しがちですが、好きなこと、強いことに着目し支援すると、人は自ら動いてくれる」と白澤氏。
さらに、相手の意欲を高めるためのポイントを教えてくれた。
第1のポイントは、「些細なことから、自己決定・選択を支援する」こと。「あなたに任せるから」と言われることは多いものの、些細なことから利用者に選んでもらうようにし、「うまくいったら、『あなたが決めたからうまくいった』と伝えること」と白澤氏。
第2のポイントは、「したいこと」「好きなこと」「できること」を言える雰囲気をつくるということ。「なんでも言ってください」「一緒にやりましょう」と声をかけることが大事。
第3のポイントは、利用者が自信を得ていくコミュニケーション技術を活用すること。具体的には、「前に○○をして良かったと聞きましたよ」、「じゃあ、今からスタートできるんですね」などと、自信をなくして現実を否定的に捉えている利用者に対し、肯定的な解釈をすると良いという。
第4のポイントは、具体的な短期の目標を設定すること。利用者がしたいことに関する目標を立て、その結果を一緒に喜び、リスクを減らすことが大事と伝えた。
こうしたことを説明した上で、「ただし、本人の価値観を変えることができないので、意欲がでない利用者についても、受け止めることが重要」と、白澤氏。
講演の最後、ストレングスモデルを活用してケアプランを作成する考え方を、いくつかの具体的な事例を交えて紹介した。
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