東北大学大学院医学系研究科代謝疾患医学コアセンターは、8月1日、動脈硬化発症の新たな分子メカニズムを解明したと発表した。
心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患は日本人の死因の3分の1を占め、食生活の欧米化に伴って、ますます増加の一途をたどっている。その原因として、血中コレステロール値の上昇や肥満・メタボリックシンドロームなどが知られている。
これらの代謝異常が、血管病変である動脈硬化をひきおこすメカニズムについて、世界中で精力的に研究が進められているが、同大学の研究グループは、小胞体ストレスによって誘導されるCHOPと呼ばれるタンパク質が、動脈硬化の発症に大きく関与していることを解明した。
CHOPは、小胞体ストレスがかかると増加し、細胞障害を起こすタンパク質として知られている。また、動脈硬化病変部位ではCHOPが増加していることから、同部位には小胞体ストレスがかかっているものと考えられている。
そこで同研究グループは、CHOPを作ることができないマウスを作製し、動脈硬化発症への影響を検討したところ、このマウスは、コレステロールが高くなっても動脈硬化が起こりにくいことを見出した。さらに、この動脈硬化阻止効果は、血管細胞・血球細胞の相互作用による「血管における炎症」が抑制された結果によるものであることを明らかにした。
小胞体ストレスは、糖尿病や神経変性疾患など、様々な疾患の発症メカニズムとして最近注目を集めているが、動脈硬化や血管治療後の狭窄においても小胞体ストレスが関わっていること、および、その分子機序としてのCHOPの役割が、本研究により明らかになった。この成果は、高コレステロール血症による動脈硬化性疾患やステント治療後の血管狭窄など、直接死因につながりうる疾患の新たな予防法・治療法の開発につながるものと期待される。