7月28日、厚生労働省は社会保障審議会介護給付費分科会(第77回)を開催した。
議題は、「リハビリ・軽度者(予防給付)について」、「福祉用具について」、「地方分権一括法の成立・交付に伴う基準省令改正について」、「その他」の4点。このうち、リハビリ・軽度者(予防給付)、福祉用具に関しては、意見陳述人として6人が招かれ、ヒアリングが行われた。
リハビリ・軽度者(予防給付)については、まず、厚生労働省担当者が、資料をもとに現状を説明。その上で、それぞれの論点が提示された。
【リハビリに関する主な論点】
○リハビリテーションを包括的に提供できる地域のリハビリ拠点をどのように整備・推進していくのか。
○通所リハビリテーションの提供サービスが通所介護と類似しているという指摘があるが、サービス提供のありかたについてどう考えるのか。
○訪問リハビリテーションの果たすべき役割についてどのように考えるのか。また、リハビリテーション専門職の果たすべき役割や他職種とのかかわり方は?
○上記3つの論点において、リハビリテーションの量とともに質をどのように担保すべきか。
【軽度者(予防給付)に関する主な論点】
○通所介護予防サービスにおいて、重度化を防ぎ、生活機能向上の達成を実現している事業所を重点的に評価すべきではないか。
○訪問方介護予防サービスにおいて、利用者の能力を最大限に引き出す支援を行うため、リハビリ専門職と連携してアセスメントを行うなど、サービス提供のあり方を検討すべきではないか。
○自立支援に資するサービス提供がなされているか、モニタリングを行いながら、改善につながっているケアプランを重点的に評価するなど、介護予防ケアマネジメントのあり方を検討すべきではないか。
意見陳述人の一人として登壇した、日本理学療法士協会の半田会長は、まず、リハビリテーションの現状として、「最も重点的に行われるべき急性期のリハビリ医療が十分でない」、「回復期的機能を持つ診療所のリハビリが不足」、「訪問リハビリは絶対量が不足」、「通所リハビリは“お預かり機能”中心」と、問題点を指摘。
また、日本理学療法士協会が昨年1月に行った調査で、ケアマネジャーを対象に訪問リハに関してたずねたところ、リハビリテーションが必要な人のうち39.5%に「あまり導入できていない」、15.3%に「導入できていない」と、半数以上において適切に導入できていないと回答されていたことを紹介した。導入が適切にできない理由の上位は、「地域の訪問リハビリテーションのサービスが少ない(ない)から」(74.4%)、「医師は必要だと判断したが本人および家族が断ったから」(44.0%)。
さらに、利用者調査の結果も紹介。リハビリテーションに対する患者の不満で多かったのは、「提供されるプログラムの中身の質」と「提供されるプログラムの内容構成」だった。これについて半田氏は、「治してもらうリハビリテーションから、生活のためのリハビリテーションへの切り替えがうまくいっていない」と問題点を指摘した。
このほか、日本リハビリテーション病院・施設協会会長の浜村明徳氏、日本作業療法士協会会長の中村春基氏の意見陳述の後、委員から質疑応答が行われ、現状の問題点や今後の解決策などについて、質問があがった。
佐藤保委員(日本歯科医師会常務理事)は、「必要にもかかわらず、受けていないというのは、歯科も同様。口腔機能向上加算の場合、アクセスや理解不足が原因」と、歯科になぞらえてコメント。これに対し、半田氏は、「急性期のころから問題があるのだろう。特に急性期から直接在宅にかえる人において、教育ができていない」と回答。
また、訪問介護においてリハ職が関与した結果、よい効果が得られたことを紹介した中村氏は、関与の仕方についてたずねられ、「リハビリテーションを行うのではなく、ヘルプの仕方や関与の仕方について助言、指導を行った。(ヘルパーが)過関与になっていることは多く、できる能力を使っていただいていない」と、訪問介護における問題点を指摘した。
池田省三委員(龍谷大学教授)からは、訪問リハの人員、期間について質問があり、半田氏が「最低でもPT、OT、STが一人ずつと管理者の4人が必要。また、目的志向的なリハビリテーションであるべきで、どこに目的を置くのかを明確にしてリハビリテーションを設定しない限り、効果が得られない」と考えを述べた。
――第77回社保審レポ(2)へ続く
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