市民福祉情報オフィス・ハスカップは、7月13日、都内で「ハスカップ・セミナー2011 No.02」を開催した。今回は立正大学大学院社会福祉学研究科講師の國光登志子氏をゲストに迎え、「適切なケアマネジメントってなに?」をテーマに、講義がなされた。
國光氏は1960年代より都職員として福祉事務所ケースワーカーや保健福祉センター所長などを歴任。社福法人小茂根在宅介護支援センター長、立正大学社会福祉学部教授などを経て現職。社会福祉士、ケアマネジャーとしてのキャリアもある。
「適切なケアマネジメント」とは、しばしば耳にするが、果たしてどんなときに、誰が誰に対して言っているのだろうか。「適切でない」ケアマネジメントもあるのか、その判断は誰がするのか。
國光氏は最初に、介護保険制度のスタート時からのケアマネジメントの変遷を、時系列に沿って確認しながら、問題点を列挙。
たとえば、居宅介護支援の一連の業務のあり方とケアマネジャーの責務として筆頭に挙げられる「利用者・家族にケアマネジメントの方法についてわかりやすく説明し、理解を得て主体的に参加し、自らの課題解決に向けて意欲的に取り組めるように働きかける」部分が、実は最も難しく、実現できていないと述べた。
また、ケアマネジメントの基本プロセスは、1)入口(ケース発見)→2)アセスメント→3)ケース目標の設定とケアプランの作成→4)ケアプランの実施→5)モニタリング→6)再アセスメント→7)ケアプランの見直しという循環サイクルであり、一つひとつの段階ごとに重要なポイントがあるが、國光氏は、「アセスメントをしないでケアプランを立てたり、ケアプランを作成せずにサービスを提供するなど、一段抜きに先に進むようなアプローチはケアマネジメントの理念に反し、ケアマネジメントとして認められない」としながらも、「理念としては基本プロセスに一段ずつ踏んで展開させていくが、実践場面においては、必ずしも一つの段階が終了してから次の段階に進むのではなく、重層的に、同時並列的に次の段階へ展開することがままある」とケアマネジメント業務の複雑さを指摘。
さらに、ケアプラン作成については、便利な作成ソフトが数多く流通している中、「ソフトの業者に頼りすぎると個別性が見えなくなる」と警鐘を鳴らした。一旦便利なソフトにめぐり合うと、そのソフトでしかケアプランを作成できなくなるという笑えない話も実際耳にするところである。
そして、サービス提供者会議については、「半ば形骸化しており、開催率が低い」と指摘。
忙しくて開けないといった物理的な事情もあるが、サービス提供者会議が空洞化すると、アセスメントが不十分、ニーズの導き出し方が一面的、目標が抽象的、などの弊害が生じると指摘した。ケアマネジャーの実感としては、「医師など敷居が高い専門職に対する抵抗感、恐怖心が払拭できない」「やっと開催しても手ごたえがなく、負担感のみが残る」といった声も聞かれるという。
厚生労働省の「ケアプラン点検支援マニュアル」には、保険者がケアマネジメントのねらいとする内容が抑えられているかどうかを確認する42の質問項目があるが、これは同時に担当ケアマネジャーの自己点検の指標としても活用できるようになっている。
このマニュアルには「適切なケアマネジメント」とは何かを追求する内容があるが、國光氏は、「この点検マニュアルがどの程度忠実に実践場面で活用されているかが重要。自己点検・評価の結果が、その後のケアマネジメントにどのように活用され、その結果ケアプランがどのように変更され、結果として利用者の自立度がどのように変化したのか、継続的・具体的に追跡・検証していく必要がある」と語った。
そして、「適切なケアマネジメントへの誘導策として加算・減算によるインセンティブがあるが、減算を逃れ加算を取得するという条件を整えることに関心が向けられ、個々の利用者の個別課題を利用者らの参加により自立支援に向けていくかなどの適切なケアマネジメントの本質から離れ、形式的にプロセスを踏まえることに事業所ぐるみで関心が向けられることになる」と警鐘を鳴らした。