昨年好評を博した、東京都医療社会事業協会が主催する公開講座「病院ってどんなところ」が、3月5日、品川区で開催された。
今回のテーマは、認知症を含めた精神科病院。老人性認知症の治療病棟、療養病棟などに勤める、都内の現役MSWがパネリストとして招かれた。
参加者は、現役のケアマネジャーや地域包括支援センター職員らを中心に約90名。介護福祉のベテランであっても、なかなかわかりにくい精神科病院の役割と活用法について正しく学び直す機会となった。
まず、東京武蔵野病院の川合聡氏から、精神科病院と一般病院の違いが解説された。 川合氏はMSW(医療ソーシャルワーカー)であると同時にPSW(精神保健福祉士)資格を有し、自傷他害のおそれがあるケースなど緊急的な措置入院の調整を多く行っている。
「精神科の場合、骨折など他の疾患と違って、いきなり入院加療を希望されても困難」と制度上の受け入れ要件を話し、普段から外来受診を通して関係をつくっておく重要性を強調した。
そして「認知症も病気の1つなので、治療病棟への入院を利用して生活リズムを整え、在宅介護を続ける方法と考えてほしい」と、精神保健福祉センターから治療病棟の空床情報を検索する方法を紹介した。
続いて順天堂東京江東高齢者医療センターの塩路直子氏が、医療保護入院について解説。家族や成年後見人などの同意を要する形態だが、こうした人がいない患者は市区町村の命令によって、自傷他害のおそれがなくても緊急的に入院できる。 「ケアマネジャーから見て入院必要と判断したら、入院相談を前提とした外来受診であると明確に伝えてほしい」と話した。
退院調整については、「介護老人保健施設への入所は、ハードルが高い。アリセプトのように高額な薬を飲んでいる場合や、インスリン注射を自己管理できない認知症の方はかなり困難」と現状を説明した。
上川病院の津川晴奈氏は、心不全や褥そうなど身体合併症をかかえる認知症高齢者を受け入れる、認知症疾患療養病棟の機能を紹介した。同院では院内グループホームケアやショートステイの受け入れ、通所・訪問のリハビリ等を行っている。
「数カ月から1年単位と長期にわたる、抑制しないケアによって、精神症状が安定してきます」と、津川氏は治療病棟と機能の違いを説明。口から食べる支援を経て、特養や老健へ移るケースも多いという。
――レポート2へ続く