厚生労働省が2月7日に開催した第71回社会保障審議会介護給付費分科会では、区分支給限度額に関する調査結果が公表された。このうち、市町村が実施したケアプラン点検の評価では、区分支給限度額超過利用者のケアプランのうち「見直す余地がある」とされたケアプランは9割に上った。
同省によると各市町村で行った点検は、点検者は看護師2人と社会福祉士・介護福祉士2人の計4人が要介護認定介護1、3、5の各十数例を評価した結果であり、出席委員らからは、「評価の中ではサービスの具体的な提供内容や家族関係など、判断材料の少なさを点検者自身が認めている」「たった4人の評価者でも医療系か福祉系かで意見が異なる。これで9割に見直し必要とする資料の提示の仕方が問題」と批判が相次ぎ、同省は「限られた時間と人員で実施した点検であくまで参考に」と弁明を繰り返した。
市町村の点検者評価は、「サービス提供量が多すぎる、または不足しているケアプランがそれぞれ半数以上ある」とされ、具体的には、“生活援助が多すぎる。重度者以外の場合は何をやっているのかわからない”という生活援助のサービス量過多への指摘や、“医療系サービスが少なく福祉系のサービスが多すぎて利用者の自立を阻害している。自立度がどんどん悪化するのではないか”など自立度を改善させるためのケアプランになっていないという意見が紹介された。
評価者の職種によって意見が割れた内容では、看護師である評価者からは、「訪問介護」「通所介護」は提供量が多く「訪問看護」は提供量が不足しているとの指摘があった一方、社会福祉士・介護福祉士の評価者は、 「訪問介護」「訪問看護」の提供量が不足していると評価していた。
見直しが必要と評価されたケアプランの3つの実例も公開され、リハビリテーションや訪問看護など医療系のサービスが少ないと思われるプランとして、要介護5、60歳代女性、認知症自立度?、日常生活自立度C2、脳卒中の既往歴があり、寝たきり状態、薬の管理が必要、おむつ使用、家族同居の状況で、訪問介護が毎日30分1日4回入るケアプランが示された。これに対し、評価者の意見は「ADL改善の可能性検討。60歳代と若く認知症自立度?であれば、日常生活自立度の状況を回復するプランの必要性も考えられる」だった。
武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は「今のケアマネジャーは、看護職あがりが少なく専門職の意識が低い。利用者の御用聞きケアマネジャーにならないとケアマネを替えられるという恐怖心があるのでは。こうしたケアプランをチェックする機能はどうなっているのか」と同省に質問。事務局側は「保険者によるケアプラン点検は2009年度で56%程度で専門的な判断が求められるので保険者の事務方がチェックすることは難しい。ケアプランをチェックする役割を持つ主任ケアマネジャーは、事業所や地域包括支援センターなど現在、資格取得者で2万人あまりいるがその養成も今後検討したい」と答えた。
馬袋秀男委員(民間介護事業推進委員会代表委員)は、「提示された医療系のサービスが少ないと思われるプランで、訪問介護が1日4回は多いと評価されているが、在宅として部分的に見るからでは。施設なら要介護5の人にどれだけケアをしているか。施設でのケアが在宅でできるのか、適切なサービスが限度額でケアマネジメントできるのか整理していく必要がある。訪問介護と通所介護が多いとの指摘についても量を増やすのがそこしかなかったというのが今のサービスの実態。多職種によるアセスメントに基づいたケアマネジメントが今後求められる」と述べた。
木村隆次委員(日本介護支援専門員協会会長)は、「見直しが必要とされたケアプランの実例の中には独居で歩行困難、おむつ使用でも要介護1というケースがあったが、要介護度との一致率を考えていかなければならない。区分支給限度額が要介護1でオーバーなら2にすればいい。そもそものケアマネジメントプロセスの入口の要介護認定から、最後のサービス実施までトータルに検討する必要がある」と訴えた。
藤原忠彦委員(全国町村会長)は、「同居家族がいるケースでも、農山村などでは繁忙期と閑散期で介護力も変化する。全国一律だけでなく地域の介護力に応じた柔軟に運用できる制度改革が必要だ」と主張した。
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