シルバーサービス振興会は、1月14日、第228回月例研究会を都内で開催した。今回は「介護保険の現状と課題〜地域包括ケアを中心として」を議題に、厚生労働省老健局振興課長の川又竹男氏が講演を行った。
川又氏は、まず現状認識を確認するため、年表やグラフを示しながら、高齢者保健福祉政策の流れや介護保険制度をめぐるこれまでの経緯を解説。そして今後の介護保険を取り巻く状況について、高齢者人口の増加にともない、2055年には75歳以上の高齢者が25%を占め、わが国に各国に先駆けて未曾有の超高齢社会が到来することを示した。
一方で、介護分野における人材確保の状況はなお厳しく、2009年より実施されている介護職員処遇改善交付金により給与は上がったものの、次期改正では保険料にその分が上乗せされる見込みだ。ついで川又氏は「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度」についての中間とりまとめについて触れた後、今回の核となる「地域包括ケアシステム」について述べた。
地域包括ケアは川又氏によると、1)医療との連携強化、2)介護サービスの充実強化、3)予防の推進、4)見守り、配食、買物など、多様な生活支援サービスの確保や権利擁護など、5)高齢期になっても住み続けることのできるバリアフリーの高齢者住まいの整備(国交省)の5つの視点より取組みがなされており、これらのサービスや事業はいずれも、日常生活圏域(30分でかけつけられる範囲)で提供されることを目指しているという。
介護業界が注目しているのは、2)のなかの「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス事業」だが、2011年度予算約12億円を確保し、運営費を補助する形で全国30市区町村(実施主体)でモデル事業を実施する計画である。
これにより、利用者のニーズや生活スタイルに合ったサービスの提供が可能になり、たとえ単身・重度の要介護者であっても、在宅を中心とする住み慣れた地域で、「尊厳と個別性」が尊重された生活を継続することができるという。
また、この事業では医療と介護の境目のないサービスを提供することが求められているため、小規模多機能型居宅介護と訪問介護など、複数の居宅サービスや地域密着型サービスを組み合わせて提供する複合型事業所を創設する。これにより利用者は医療ニーズに対応した小規模多機能型サービスなどの提供を受けられるようになる。
このほかにも、この講演では地域包括支援センターの役割や地域支援事業、介護サービス情報の公表制度の見直しなどについて触れ、介護保険法の改正だけでなく、さまざまな施策が進行中であることを述べた。
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