杖や手すりといった福祉用具は、高齢者の日々の生活を直接支える大切なツールです。その専門家は、安全・安心を維持するため日々、知恵を絞り、工夫を凝らし続けています。このシリーズでは、同じ介護業界で働くプロ(ケアマネジャー)が、福祉用具の専門家の、ちょっとすごい取り組みや工夫を取材・紹介します!
- 取材した介護のプロ(ケアマネジャー)
- 金成一弘さん(居宅介護支援事務所プロージット/株式会社Prosit代表取締役)
- スゴ技を発揮した専門家(福祉用具専門相談員)
- 関口茉純さん(ダスキン ヘルスレント新三郷ステーション お客様係)
年齢を重ねた方の生活へ思いを馳せ、心尽くしの対応を
「初めての歩行器」を半年かけてフォロー
金成:関口さんに用具の手配をお願いするようになってから早3年ですが、的確な提案にいつも助かっています。特に印象に残っているのが、1年半ほど前から関わっている要介護1のAさんのこと。脱水で入院していたのですが、退院にあたって病院から依頼を受けました。
関口:70代後半の男性で、体の機能がかなり低下していた方ですね。特に歩行状態が不安定で、取り急ぎ歩行器をレンタルしたいとご連絡いただきました。一定の速度を超えると自動で減速してくれる「抑速機能付きタイプ」をご希望でしたので、すぐに何種類か取りそろえてご自宅を訪問。集合住宅ということもあり、一番コンパクトなタイプを導入していただくことになりました。
金成:Aさんはそれまで歩行器を使用された経験がありませんでした。認知機能の低下がみられたこともあり、ご本人に必要性を理解していただくのはなかなか難しかったと思います。
関口:確かに、当初は「そんなものなくても歩けるよ」という反応で、ほとんど使っていただけませんでした。訪問するたびに「最近はお使いいただいていますか?」と状況を確認するだけでなく、歩行器のメリットを粘り強くお伝えした結果、半年ほどたってようやくお使いいただけるように。タイヤに土が付いていて、「歩行器で外出されている!」と分かったときはうれしかったですね。
玄関の「危ない!」を察知し、手すりの提案で転倒予防
金成:もともとAさんは一人暮らしで、かなり部屋が荒れている状態だったので、業者に清掃をお願いすることからお手伝いが始まったのです。最初に訪れたときは関口さんも驚いたと思いますが、そのときに「手すり」の導入を提案してもらいましたね。
関口:伝い歩きに近い状態だったので、安全に移動できるよう早急に何とかしなければ、と感じました。そうした視点で見たとき、最も大きな問題点を感じたのが玄関だったのです。なぜか玄関周りを囲うようにカーテンが設置されていて、ふらついたときは束ねたカーテンにつかまる……というような状態でした。
金成:関口さんは早々に危険性を察知し、サイズ感などを検討して、すぐに手すりを手配してくれました。介護を受ける方自身では必要性が分かりづらい部分についても、積極的に提案してもらえるのはありがたいです。
関口:言葉で説明するよりも、現物をお見せするのが一番だと考えました。玄関に設置して使い方を見ていただいたところ、「これはいいね!」と好感触。安心してつかまれる手すりを導入したことで、カーテンに頼ることもなくなっていきました。
用具を活用して元気に暮らす姿が大きな喜び
関口:当社では3か月に1度の定期点検を基本としており、用具の状態などをしっかりと確認しています。電話でお尋ねすることもありますが、通話が難しい方については直接訪問し、自分の目で見て確認することを重視。アポイントを取って伺うのが難しいようであれば、ホームヘルパーさんの訪問直後の時間に合わせて顔を出すなど、スムーズにお会いできるよう工夫しています。
金成:ケアマネジャーやホームヘルパーでは気付けないことも多く、やはり福祉用具専門相談員の目が入ると安心感が違います。そういえば、Aさんがなぜか歩行器の収納バッグだけ紛失されていたことがありました。関口さんは早々に代わりのバッグを取り付けて、さらに取れにくいようテープで巻いてくれましたよね。細やかな対応に感心しました。
関口:ありがとうございます! 最近、近くの商店街でAさんをお見かけすることがあったのですが、歩行器を使って安定して歩かれていました。自分が提案した用具が生活の中で役立っていることを実感でき、とても大きな喜びを感じました。
金成:先日、Aさんの認定調査(介護が必要な度合いを調べる聞き取り調査)があったのですが、調査員の方に「この歩行器がいいんだよ」と楽しそうにお話しされていました。関口さんの努力で、Aさんの生活は本当に変わったと思いますよ。
「急ぎの依頼」の背景を思い、スピード感を重視
金成:急な依頼にも迅速かつ柔軟に対応してもらえる点でも、関口さんにはいつも助けられています。例えば、退院してご自宅へ戻るといった場合、ぎりぎりのタイミングで病院から依頼を受けるケースが少なくありません。時には「今日、退院される方がいるのですが……」と当日に連絡が来ることさえあります。
関口:確かに、「朝にご連絡を受けて、夕方には納品」という動きになることも珍しくありませんね。大至急で必要になるのは、ベッドや歩行器、車いすなど、生活動作に関する用具が中心です。どれがマッチするかリハビリテーションを通して確かめたいという場合は、ご自宅でなく病院に用具をお持ちすることもあります。
金成:急ぎの依頼があれば、真っ先に「今日のお届けなんですが、大丈夫でしょうか?」と関口さんに相談しています。わずか数時間でニーズに合った用具を準備し、搬入するのは並大抵のことではないと思いますが、どうやって実現されているのですか?
関口:基本的にはステーション内のスタッフ同士で連携し、スケジュールを調整し合って対応しています。また、普段から在庫に余裕を持つことに加えて、時には近隣にある用具の卸業者さんに連絡を入れ、直接受け取りに行くこともあります。
金成:どれだけ急ぎの依頼でも、「できるだけ早めにお届けしよう」という思いで頑張っていただけることが本当にありがたいです。とりわけ、終末期の方では迅速対応が大事ですから、「関口さんにお願いしてよかった」と感じることが多いです。わずか数日であったとしても、ご希望通りに自宅で過ごしていただくことの意義は計り知れません。
関口:終末期の方がご自宅に戻られる場合、残されている時間がそれほど長くないこともしばしば。用具の準備が間に合わないために入院が長引き、そのまま息を引き取られる……といった事態は、力が及ぶ限り避けなければなりません。ご本人やご家族の思いをかなえるため、少しでも早くご用意することを心がけています。
地域の皆様の生活を力強く支えていきたい
金成:もう一つ、ダスキンヘルスレントさんならではの長所が、「介護以外の領域にも強い」ことだと思います。その典型例が、エアコンの清掃ですね。以前、ある男性から「エアコンの汚れが気になるけれど、自分では掃除できないんだよ」と、悩みを打ち明けていただいたことがありました。その方は糖尿病で片脚を切断しており、高所の作業を行うのはかなり難しい状態だったのです。そこで関口さんに相談したところ、「今すぐ伺います」と即答してくださいました。
関口:エアコンが快適に使えないとなると、体調にも影響しかねませんからね。現場の状況を確認してから社内の専門部署に連絡し、すぐに清掃スタッフを手配しました。やはり、一般的には「ダスキン=お掃除」というイメージが根強いようで、用具以外のご相談をいただくことも少なくありません。
金成:用具のことでも、それ以外のことでも頼れる存在として関口さんは厚く信頼され、さまざまな悩みを相談されやすいのだと思います。つい先日も、「朝の外出時、歩行が不安定で……」とおっしゃる方に、杖や車いすを提案していただきましたね。「ケアマネジャーを通さないと話を進められない」という姿勢ではなく、プロとして必要に応じて独自に対応をした上で、こちらへの報告や連絡も欠かさない点が素晴らしいと思います。
関口:そう言っていただけるとうれしいです。年齢を重ねたり、病気や障害を抱えたりしてからは、さまざまな生活上の困難が起こりやすいもの。私の専門である用具のことを中心に、ダスキンヘルスレントという会社としての強みも生かしながら、これからも地域の皆様の生活を力強く支えていきたいです。
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