介護の専門家に相談できる

杖や手すりといった福祉用具は、高齢者の日々の生活を直接支える大切なツールです。その専門家は、安全・安心を維持するため日々、知恵を絞り、工夫を凝らし続けています。このシリーズでは、同じ介護業界で働くプロ（ケアマネジャー）が、福祉用具の専門家の、ちょっとすごい取り組みや工夫を取材・紹介します！

女性ならではの視点　福祉用具の色にも配慮

猛吹雪の出会いも　笑顔で駆け付け

小野：岸さんと初めてお会いしたのは、年末の猛吹雪の日でしたね。お客様は70代前半の女性で、がんの末期の方でした。娘さんとお家で過ごしたいと言われて、急きょ退院が決まりました。

年末で事業所の仕入先がどこも閉まっていて、途方に暮れていたのですが、「そうだ！ダスキンさんなら在庫があるはず！」と思って連絡したんです。岸さんは気配りを忘れない方で、無理なお願いをした時もいつも笑顔なんです。その時も猛吹雪の中、笑顔で駆け付けてくださいました。

狭いアパート…家具を福祉用具に

岸：立ち上がりが難しかったので、ベッドの横にも手すりをつけました。本当はもっと必要だったんですが、アパートが狭くて、居間へ向かう動線に物を置くことも難しい状況で、歩行器も利用できないほどでした。それで他の介護の専門職と話し合って、ソファーの背もたれやテーブルを手すり代わりに使用することにしました。

小野：最初のうちは、近所のコンビニまで歩いて行けたんですが、徐々にめまいや痛みが強くなり、体力がなくなっていきました。寝たきりになって、広いお部屋に移ってからは、福祉用具を手厚くすることができたのですが、病院に緊急搬送されて3日後にお亡くなりになりました。

娘さんからは、「最後に家で過ごさせてくれてありがとうございました」とのお言葉を頂きました。旦那さんを早くに亡くして、母子家庭で育ったこともあってか、母娘のきずなはすごく固かったですね。

おしゃれな歩行器で気分も前向きに

小野：岸さんとのお仕事で特に印象に残っているのが、桜色の歩行器のことです。

お客様は80代の女性でした。腰椎圧迫骨折で入院されて、老健でリハビリを受けた後、住宅型の有料老人ホームに入居されました。ご自宅に帰ることを望んでいましたが、同居していた娘さんとの折り合いがつかなかったようです。脚の筋力が低下し、痛みで思うように体を動かせず、精神的に落ち込みがちでした。

「歩行がとても不安定なので、安定感のあるものをお願いします」とだけお伝えしたのですが、おしゃれな歩行器を選んでくれて、お客様の気分が上がっていくのがわかりました。

岸：お客様は痛みがひどくて、ご自分で体を動かすのが難しい状況でした。歩行の際、かなり前傾姿勢になっていたので、前方への転倒を防止するため、バランスを維持できる馬蹄型にしました。

小野さんから事前に、「お客様が精神的に落ち込みがち」だと伺っていたので、できれば気分を上げていただきたいと思って、病院にあるような黒や緑ではなく、華やかな色の歩行器をお持ちしました。お客様に喜んでいただけて、うれしかったです。

同じ機能なら、気持ちが明るくなる色を

小野：それまでは「どうして私がここに…」と、部屋に引きこもりがちだったんですが、この歩行器をきっかけに、お客様の気持ちは前向きになっていきました。談話室にも行くようになって、お友達もできたようです。ご自分から、「お風呂が好きだから、お風呂がいいデイサービスに行きたい」とおっしゃるほど、気持ちが前向きになっていきました。

実は介護ベッドもレンタルしたのですが、それもごつい感じのものではなく、背の低い、明るい白色のインテリア性の高いベッドを選んでくれたんです。

岸：介護ベッドは茶色や黒のものが多いですが、歩行器がピンクだったので、同じ機能だったら、気持ちが明るくなる色がいいと思って、白の介護ベッドを選びました。

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女性の福祉用具専門相談員が増えてほしい

小野：女性ならではの視点で、家具の色にもこだわってくれるんですよね。とにかく、こまやかな配慮がすごい！だから私は岸さんが好きなんです。

岸：ありがとうございます。

小野：今、20社とやり取りしていますが、女性の担当者は3名だけなんです。お客様も女性が多くて、男性だと相談しにくいこともあるので、もっと女性が増えてくれるとうれしいですね。

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