介護の専門家に相談できる

杖や手すりといった福祉用具は、高齢者の日々の生活を直接支える大切なツールです。その専門家は、安全・安心を維持するため日々、知恵を絞り、工夫を凝らし続けています。このシリーズでは、同じ介護業界で働くプロ（ケアマネジャー）が、福祉用具の専門家の、ちょっとすごい取り組みや工夫を取材・紹介します！

90歳代での在宅復帰を支えた、丁寧で緻密な提案力

不安だらけだった大腿骨骨折からの在宅復帰

照井：鈴木さんと初めて一緒に仕事をしたのは、私が介護老人保健施設でケアマネジャーとして働いていたころのことだったと記憶しています。

鈴木：そうですね。居宅介護支援事業所のケアマネジャーさんと一緒に、退所前のカンファレンスから参加させていただきました。

照井：対象者は大腿骨骨折のため入院し、病院でのリハビリを終えた後、老健にも3か月ほど入所していた90歳代女性でした。ご高齢である上、ご自宅は広く、敷地内の段差も多かった。当初は「自宅に帰って大丈夫だろうか？」と不安をぬぐいされませんでしたが、日中、1人で留守番ができるほどまで状態が改善しました。

つまり、90歳代でありながら大腿骨骨折から回復したわけです。なかなかないことですよ。鈴木さんの適切な提案があったからこそ、実現できたことです。

鈴木：具体的にはコンパクトな車いすと介護用ベッド、玄関の両手すり、ポータブルトイレなどを提案させていただいたと記憶しています。

面談前に「ぴったりマッチした提案」を実現！

照井：私が驚いたのは、まだ対象の方と面談したこともない最初の提案の段階から、ぴったりマッチするような用具を選択していただいたことですよ。

例えば、車いすは、足こぎするご利用者様の特性に合わせて座面が通常より5㎝ほど低く設定されていました。140㎝ほどの身長を考慮し、ポータブルトイレは背もたれ・ひじ掛けがあるタイプを提案していただきました。

「面識のない方の状態を情報だけでイメージし、提案する」というのは、口でいうほど簡単なことではありません。

それでも鈴木さんは、面識のない方に対しても、ぴったりマッチした用具を提案してくれる場合が本当に多い。その実現のため、心がけていることを教えてください。

徹底してこだわる「事前の情報収集」

鈴木：大切にしているのは、事前の情報収集です。特にケアマネジャーさんのアセスメントの情報を事前に得るか得ないかでは、提案の確度が全く異なりますね。リハビリ職がかかわっていた方なら、その情報も入手するよう心がけています。

そのほか、日中は自宅のどこで生活されるのかや同居するご家族の状況、自宅での導線、外出機会の有無などの情報はできるだけ集めた上で、提案に向けたシミュレーションを繰り返します。

照井：提案内容が受け入れられた後も、状態の変化にあわせて、細かく丁寧に調整を続けてくれる点もありがたいです。おかげで、先ほどの90歳代の方は、老健から退所以降、ずっと在宅で生活し続けています。

照井：90歳代の方といえば、小規模多機能型居宅介護を使う95歳の方を半年ほど前から担当していただいています。

鈴木：「たちアップ」（※手すり）を提案させていただいた方ですね。確か、靴も提案していただきました。

照井：その方はよほど気に入られたのか、今でも小多機に来る際には、その靴を履かれていますよ。もちろん、「たちアップ」も使い続けてくれています。

それにしても、いつも感心するのは、お客様のニーズや希望を、本当に上手に鈴木さんが引き出すこと！それだけ鈴木さんが信頼されているということだと思うのですが、この機会に、お客様と良好な関係性を築き、信頼を得るために工夫していることを教えてください。

良好な関係構築のためのこだわりポイントは…

鈴木：具体的に心がけていることとしては、訪問した際、お客様とご家族様の両方にお会いできる時間帯を選ぶようにしていることですね。

もちろん、ケアマネジャーさんから情報も大変重要です。だから、ケアマネジャーさんから連絡があったり、お客様のことで共有すべきことがあったりしたら、できる限り早く事業所にお伺いし、情報交換をするようにしています。

照井：実際、鈴木さんはこまめに私たちの事業所に立ち寄り、いろいろな情報を提供してくれます。私たちが把握していないことを鈴木さんが知っていることもあり、いろいろな意味で助かります。きっと、そうした日々の丁寧な情報収集が、緻密で適切な提案につながっているのでしょう。　

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