「介護職員初任者研修は全額補助を」「介護職員処遇改善加算の対象は拡大すべき」-。特別養護老人ホームの経営者らで組織する全国老人福祉施設協議会(全国老施協)は、介護人材確保のための対策強化などを求める要望書を厚生労働省に提出した。
要望省は、今月末、厚労省が財務省に提出する来年度の予算概算要求や税制改正を見据えたもの。
要望書では、介護人材の不足は特に地方で顕著と指摘。「介護福祉士を志す者は数万人に1人であるという状況が現に訪れている」とした上で、来年度の予算では、介護人材確保に向け、多面的な政策への投資が必要と訴えている。
■外国人材確保へ、言語教育と住環境の整備・充実求める
その上で、介護人材を確保するための視点として、次の3点を提示した。
・若い人材を確保するため、「介護業界で働き続ける将来」を具体的にイメージできる仕組みを作る。特に賃金・待遇などの向上を軸に検討する。
・アクティブシニア(元気な中高年層)を確保するため、働きやすい環境づくりと、介護への就労に現実感を持てる仕組みづくりに取り組む。
・外国人材を活用するため、EPA(経済連携協定)や技能実習制度など、受け入れの仕組みの拡充。言語教育と住環境などの整備・充実。
■介護従事者に「教育バウチャー」の支給も提言
3つの視点を踏まえた具体策としては、介護職員初任者研修の受講料を無料にすることを提言した。また、ケアマネジャーや介護福祉士といった資格取得や大学院への進学などに挑戦しやすいよう、介護従事者に「教育バウチャー(※)」を支給することも求めている。
さらに、来年10月の消費税の税率引き上げに合わせ、介護サービス事業所での勤続年数が10年以上の介護福祉士を対象に、月額平均8万円相当の処遇改善を実施される方針が示されたことにも言及。この措置が「介護職員処遇改善加算」の拡充によって具体化する方向性が示されていることを踏まえ、介護職員に限定されている同加算の算定対象を拡大することも提言した。
(注)教育に使用目的を限定したクーポン件のこと。利用者は支給されたクーポン件を授業料の代わりに学校や教育機関に収める。学校や教育機関がクーポン件を現金に換える。