各府省庁が財務省に予算を要求する際のルールとなる来年度の「概算要求基準」が10日、決まった。介護や医療などの社会保障費については、高齢化に伴う自然増分を今年度予算(当初予算)に6000億円まで上乗せできる。来年秋の消費税率の引き上げに伴い、勤続10年以上の介護福祉士1人当たり月平均8万円相当の処遇改善を行う方針が決まっているが、これについては概算要求とは別枠としている。
各府省庁は毎年8月末までに、「この事業をやりたいので、これぐらいのお金がほしい」という要望を書面(概算要求書)にまとめ、国の“金庫番”である財務省に提出する。そして、同省による事業内容の査定後、12月の閣議で最終的な予算案が決まり、年明けの通常国会で審議される。
「概算要求基準」は、国の財政が厳しい中、各府省庁が際限なくお金を要求することがないよう、予算に上限を設けたり、重点的にお金を配分する分野を決めたり、予算要求に関するルールを定めたものだ。
■介護ロボットやAIも、特別枠を拡充
「概算要求基準」では、社会保障費の自然増分が焦点の一つとなる。今年度は、当初予算に6300億円上乗せした範囲内の要求を認める方針が示された。だが、政府全体の歳出目標として「5000億円以内」という数字を掲げていたため、医薬品の公定価格の薬価を引き下げることで、最終的に4997億円の増額にとどまった。
今回の「概算要求基準」では、社会保障費の自然増分として、前回よりも300億円少ない6000億円の増額が認められている。来年度は、介護報酬や診療報酬の改定がない上、政府は今回、歳出削減の目標を掲げていないため、今後は自然増分の行方に注目が集まる。
政府が6月に決定した「骨太方針2018」や「未来投資戦略2018」に関する特別枠もポイントの一つだ。使い道の自由度が高い「裁量的経費」を今年度予算から1割引き下げるよう求め、減った分の金額の最大3倍を特別枠の予算として要求できるようにする。これは前回の「概算要求基準」から大幅な増額で、介護分野では、AI(人工知能)やロボットなども対象となる見通しだ。