東北大は、体への負担が小さい超音波を脳に当て、アルツハイマー型認知症を引き起こすたんぱく質の一つ、アミロイドβの発生を抑えることを確かめるための医師主導の臨床試験(治験)を開始すると発表した。こめかみの部分に特殊な機器を取り付けた患者に、3カ月ごとに超音波を照射し、1年半かけて効果を検証する。同大によると、超音波を使った認知症に関する治験は「世界初」という。
脳血液と脳組織の間には、有害な物質の侵入を防ぐ「血液脳関門」と呼ばれる仕組みがあるため、脳内に薬の効果が届きにくくなっている。治験では、超音波によって脳内の組織を活性化させ、認知症の治療を行う。これにより、「血液脳関門」の影響を受けずに十分な効果が得られるという。
同大大学院医学系研究科・循環器内科学分野の下川宏明教授らの研究グループはマウスを使った実験で、脳内にたまったアミロイドβの量の蓄積を有意に減らすことを確認した。
研究グループは今後、患者5人への超音波の照射で安全性を確認した後、40人の患者を2つのグループに分け、治療効果を調べる。3カ月ごとに外来で計6回を照射し、1年半かけて経過を見る予定だ。