「40年問題」の衝撃、介護給付費が2.3倍に!―政府試算の背景とは?

政府は、高齢者人口がピークを迎える2040年度の社会保障給付費の将来推計をまとめた。医療機関を受診する割合(受療率)や介護保険サービスの利用率が現状のままだと、医療介護給付費(保険料と税金)は最大94.7兆円となり、今年度と比べて44.8兆円増える。また、介護施設の事務職員などを含む介護業界全体の就業者数は500万人を超える見通しで、18年度よりも約170万人増やす必要がある。今回、政府が新たな推計を発表した背景を解説する。

団塊の世代が全員75歳を迎える「2025年問題」―。国はこれまで、この未曽有の高齢化に対応するため、医療介護福祉などの関係者が一体的にサービスを提供する「地域包括ケアシステム」の構築を急いできた。だが、事実上、25年に向けた最後の同時改定となった春の改定作業も終了し、与党内でも、さらに先を見越した対策を検討するよう求める声が上がっていた。

国立社会保障・人口問題研究所(17年推計)によると、日本の65歳以上の人口は、40年に3921万人に達し、15年と比べて534万人増える。総人口に占める割合は最大36.2%に上り、同年よりも約10ポイント上昇、5人に1人が75歳以上になる=グラフ=。42年を境に高齢者人口は減少に転じるが、生産年齢人口(15-64歳)の減少などで、総人口に占める割合は伸び続ける。



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■社会保障費、40年度に最大190兆円に

政府は今回、現状の受療率(入院・外来)や介護保険サービスの利用率を基に、将来の患者数や利用者数を機械的に計算した「現状投影ベース」と、都道府県や市区町村による改革が進んだ場合の「計画ベース」の2つの条件に基づき、25年度と40年度の社会保障給付費を試算した。

計画ベースの対象は、「地域医療構想」「医療費適正化計画」「介護保険事業計画」の3つ。地域医療構想は、25年に向けた医療機関の役割分担を進めることが狙いで、最もボリュームが大きい「急性期」のベッドを減らし、在宅医療の体制を整えることが最大の焦点となっている。

一方の医療費適正化計画は、医療費の伸びを抑えることが主な目的で、都道府県は6年ごとに計画を立て、糖尿病の重症化予防やジェネリック医薬品の使用促進などに取り組むことになっている。

現状投影ベースで見ると、年金や育児などを含む社会保障給付費の総額は、25年度は最大140.8兆円、40年度は最大190.3兆円。このうち医療は、25年度は最大48.7兆円、40年度は最大70.1兆円だった。一方、介護は、25年度は14.6兆円、40年度は24.6兆円で、今年度の数字と比べると、40年度は約2.3倍となっている=グラフ=。


政府の資料より抜粋
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医療から介護へ、1号保険料は9千円台に

では、計画ベースではどうなるのか。25年度の数字を見ると、医療は最大47.8兆円、介護は15.3兆円で、現状投影ベースと比べ、医療は0.9兆円減る一方、介護は0.8兆円増えた。また40年度は、医療は最大68.5兆円、介護は25.8兆円で、こちらも医療は1.6兆円減ったのに対し、介護は1.2兆円増え、全体で0.3-0.4兆円減となった。

これは何を意味するのか―。前述の3つの計画が予定通りに進むと、急性期のベッドの減少やジェネリック医薬品の普及などで医療費は減る一方、在宅医療の体制が整備され、介護サービスの基盤が充実することで、介護保険の利用者は増えることが想定される。高齢者医療から介護、つまり、病院から在宅に流れることで、介護給付費が増えるというわけだ。

実際、試算の前提となった患者数と利用者数を見ると、25年度の入院患者数は132万人、40年度は140万人で、現状投影ベースに比べ、いずれも10万人以上少ない。また、40年度の介護施設の利用者数は162万人で、現状投影ベースより9万人減る一方、在宅の利用者数は12万人増える見通しだ=表=。



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ただ、利用者の数が増える分、介護保険料も高くなる。高い経済成長が望めない場合、計画ベースの1号の保険料は、25年度は約7200円、40年度は約9200円で、現状投影ベースよりも300-400円高くなる。今年度と比較すると、40年度には約3300円増える計算だ。

利用者の数が増える分、介護現場で働く人の数も多くなる。計画ベースで見ると、介護施設の事務職員なども含む就業者数は、40年度には505万人となり、現状投影ベースよりも4万人増える一方、医療は6万人少ない328万人となる見通しだ。

消費税率の引き上げなどの財源の確保、そして介護現場で働く人材の育成…。生産年齢人口が減少する中、「40年問題」に向けた課題は山積している。

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