政府は21日、高齢者人口がピークを迎える2040年度に向けた社会保障費の将来推計を発表した。それによると、都道府県や市区町村による改革が進んだ場合、同年度の医療給付費は、現状の受療率などを基に試算した金額よりも1.6兆円減り、介護給付費は逆に1.2兆円増える。急性期病床の減少や後発医薬品の普及などで医療費は減る一方、地域の介護ニーズに応じたサービス基盤が充実し、医療との役割分担が進むことで、介護費は増額となっている。
団塊の世代が全員75歳以上となる25年に向け、都道府県では現在、さらなる高齢化に備えて医療機関の役割分担を進める「地域医療構想」に加え、医療費の伸びを抑えることを目的とした「医療費適正化計画」(第3期、18-21年度)も動き出している。一方、市区町村では4月から、「第7期介護保険事業計画」が始まった。
政府は今回、これらの計画が予定通りに進行した場合の「計画ベース」と、現在の年齢別受療率や介護保険利用率を基に機械的に患者数や利用者数を算出した「現状投影」の2種類で、医療・介護給付費(税金と保険料。窓口負担を除く)を推計した。
それによると、25年度の医療・介護給付費の総額は計画ベースで62.7-63.1兆円で、現状投影よりも0.2兆円減となった。内訳は医療が0.9兆円減(対GDP比0.1ポイント減)、介護が0.8兆円増(同0.1ポイント増)。
さらに、高齢者人口がピークを迎える40年度の推計値を比較すると、計画ベースの総額は、現状投影より0.3-0.4兆円減の92.5-94.3兆円で、医療は1.6兆円減(同0.2ポイント減)だったのに対し、介護は1.2兆円増(同0.2ポイント増)だった。政府は計画ベースについて、「疾病や状態像に応じてその人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会の実現を目指したものとなっている」としている。
■介護の就業者、40年度に171万人不足
政府側は今回、医療福祉分野の就業者数の今後の見通しも明らかにした。それによると、25年度の計画ベースの介護の就業者数は406万人、40年度は505万人で、いずれも現状投影に比べて4万人多い。18年度は334万人のため、40年度には171万人が不足する計算になる。
一方、医療の就業者数を見ると、25年度は計画ベースで322万人、40年度は328万人で、現状投影と比較すると、それぞれ5万人減、6万人減となっている。