今後の人口減少や経済の動向などに応じて、医療費の窓口負担を自動的に引き上げる仕組みの導入を求める財務省の提案について、全国10万人超の医師・歯科医師でつくる「全国保険医団体連合会」(住江憲勇会長、保団連)は、「患者負担が『天井知らず』に引き上がり、国民皆保険が壊れてしまう」などとして、提案の撤回を求める声明を発表した。
医療費は税金、保険料、患者の窓口負担の3つで構成されている。窓口負担は原則3割だが、高額療養費制度の限度額を超えた分は、税金と保険料で賄われており、高額な医薬品などを使用すると、実際の負担割合は小さくなる。
今後、働く世代の人口が急速に減少すると、税金や保険料の収入が減る一方、高齢者の増加や高額な医薬品の使用などで医療費は伸び続け、そのしわ寄せは現役世代へと向かう。財務省の提案は、日本のさらなる人口減少を見据え、現役世代の負担が過度に大きくならないようにすることが主な目的。
これに対して保団連側は、「平たくいうと、医療費が伸びた場合、保険料の引き上げ抑制を口実に、公費の拡充は不問にし、もっぱら患者負担増のみで対応するというものだ」と指摘。その上で、「保険料負担にあわせて、高率・高額の患者負担となれば、医療保険制度の存在意義が揺らぎ、国民皆保険制度そして日本の社会保障制度は壊れてしまう」などと主張した。
同省案は、政府が来月にもまとめる「骨太方針2018」に反映される可能性があるが、保団連側は「検討事項として盛り込むようなことも絶対あってはならない」として、提案そのものの撤回を求めた。
■75歳以上の2割負担も「強く反対」
財務省は、原則1割となっている75歳以上の窓口負担を2割に引き上げることも提案しているが、保団連側は「受診抑制を引き起こすものであるため、強く反対する」としている。
保団連によると、声明文は安倍晋三首相、麻生太郎財務相、加藤勝信厚生労働相のほか、約700人いる衆参のすべての国会議員に送られたという。