若年性認知症の発症を把握するには、家庭よりむしろ職場での気づきこそが大切―。認知症介護研究・研修大府センター(愛知県大府市、大府センター)は、企業での若年性認知症の人の継続雇用などの実態などを調査した結果をまとめた。それによると、若年性認知症を把握したきっかけとしては「会社からの受診勧奨」が最も多く、全体の約5割を占めた。一方、家族の気づきがきっかけとなった事例は約1割にとどまった。
大府センターでは昨年10月、従業員数500人以上の企業など6733カ所に若年性認知症や障がい者の就労継続支援に関する調査票を送付。938カ所から有効回答を得た。
■若年認知症、「知っている」は半数に達せず
若年性認知症について知っているかどうかを尋ねた質問では、45.7%に相当する429カ所が「知っていた」と回答。「聞いたことはあった」(474カ所、50.5%)を合わせると96.2%に達した。ただし、「聞いたことはあった」が半数を超えていることなどから、大府センターでは、「若年性認知症はまだ十分に理解されているとはいえない」としている。
若年性認知症やその疑いがある人、あるいは軽度認知障がいの人がいるか、過去にいた企業などは63カ所で全体の6.7%だった。
この63カ所に若年性認知症などの人を把握した経緯について尋ねた質問では、「会社からの受診勧奨」が46.0%で最も多かった。次いで多かったのは「本人からの相談・申告」(39.7%)で、「家族からの相談・申告」は12.7%にとどまった。
■社の業務上の対応、6割は「他の業務・作業に変更」
また、若年性認知症などと分かった人について、業務上でどのように対応したかについて複数回答で尋ねた質問では、「他の業務・作業に変更した」が58.7%で最多となった。次いで多かったのは休職や退職を含む「その他」(28.6%)で、以下は「労働時間の短縮など」「管理職からの変更」(いずれも15.9%)、「仕事支援者を配置」(12.7%)などとなった。
■社の雇用上の対応、6割が「報酬維持」
さらに、雇用や報酬上の対応について複数回答で尋ねた質問では、「作業能力低下でも報酬維持」が63.5%で最も多かった。一方、「話し合いで合意退職」も36.5%あった。