仕事を持つ人が在宅介護を継続するにあたり、不安を感じるのは認知症や夜間の排泄への対応などで、就労の継続が難しい人では特にその傾向は強い。ただし、訪問系サービスを月15回以上利用している場合、その不安はかなり軽減される―。そんな実情が厚生労働省の調査で示された。
調査は2017年度の厚労省老人保健健康増進等事業として行われた。在宅介護の限界点の向上や介護と仕事の両立を支援する体制の検討を目的に、昨年6月から7月、全国の自治体を通じて在宅介護の実態調査を実施。在宅の介護者から14万3321件の有効回答を得た。
■「働いていない」介護者は約半分
介護者に勤務形態を尋ねた質問では「働いていない」が49.0% 「フルタイム」が24.7%、「パート」が17.0%などとなった。
フルタイムとパートで勤務している介護者に就労の継続について尋ねたところ、「問題はあるが何とか続けている」が52.5%、「続けていくのはやや難しい」「かなり難しい」があわせて13.7%だった。一方、「問題なく続けていける」は21.2%となった。
今後、在宅での生活を継続するにあたって、不安を感じる介護を複数回答で聞いたところ、「認知症状への対応」29.6%で最も多く、「外出のつきそい、送迎等」が24.2%、「夜間の排泄(への対応)」が23.0%で続いた。
この質問への回答のうち、特にフルタイム勤務の介護者の答えを分析したところ、就労の継続が難しいと感じる人ほど、「認知症状への対応」と「夜間の排泄(への対応)」、「日中の排泄(への対応)」に不安を覚える傾向があることがわかった。例えば、「認知症状への対応」を不安に思う人の割合は、「問題なく就労を続けていける」人では22.7%なのに対し、「何とか(仕事を)続けていける」という人では40.4%、「(仕事を)続けていくのはやや難しい」という人では47.1%となっている。
また、フルタイム勤務で、要介護3以上の人をケアする介護者について、就労継続の意向とサービス利用との関係を見ていくと、「問題なく続けていける」「何とか続けていける」と回答したのは訪問系サービスの利用者では83.5%、訪問系と他の組み合わせでは82.1%、通所・短期系のみでは76.0%だった。訪問系サービスの利用回数を見ていくと、「問題なく続けていける」「何とか続けていける」と回答したのは月15回以上利用している人では83.6%、月1~14回の利用では81.9%、 利用していない人では76.7%となり、訪問系サービスの利用頻度が就労の継続に良い影響を与えることが推察できる結果となった。
◎三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 「介護離職防止の施策に資する在宅介護実態調査結果の活用方法に関する調査研究事業