高齢化で一人暮らしのお年寄りが増える中、厚生労働省は、医療機関が身元保証人らがいないことだけを理由に患者の入院を拒んだ場合、医師法に違反するとして、都道府県に適切な指導を求める通知を出した。昨年1月に内閣府の消費者委員会がまとめた建議(意見書)を受けた措置。同省では今後、介護保険施設の入院・入所に関しても、改めて注意喚起する方針。
公益社団法人「成年後見センター・リーガルサポート」が2014年秋、全国の病院や介護保険施設など1521カ所を対象に行った調査(回答率39.6%)によると、身元保証人らがいない場合、入院や入所を認めないと回答したのは、病院が全体の22.6%、介護保険施設や有料老人ホームなどでは全体の30.7%を占めた。
こうした調査結果などを受け、消費者委員会は厚労省に対して、身元保証人らがいないことのみを理由に、医療機関や介護保険施設が入院・入所を拒むことのないよう対策を講じるとともに、医療・介護現場の身元保証に関する実態を把握することなどを求めていた。
医師法は「診療に従事する医師は、診療治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」(第19条第1項)と定めている。「正当な事由」の解釈について、同省側は通知で「医師の不在または病気等により事実上診療が不可能な場合に限られる」として、身元保証人らがいないことだけを理由に入院を拒否した場合は同法に抵触するとする見解を示した。
■介護保険施設の入所拒否も注意喚起へ
介護保険施設に関する運営基準では、「正当な理由なくサービスの提供を拒否することはできない」としており、入院・入所時に身元保証人らを立てるよう求める法律上の規定も存在しない。
厚労省側はこれまで、入院・入所の希望者に身元保証人らがいないことが、運営基準上の「正当な理由」に該当しないとして、患者や利用者の入院・入所を拒んだり、退院・退所を求めたりすることのないよう、繰り返し都道府県などに要請してきたが、消費者委員会の建議を踏まえ、今後、改めて注意喚起するとしている。