厚生労働省は10月12日、「今後の介護人材養成の在り方に関する検討会」の第5回を開催し、介護福祉士がたんの吸引などの医療的ケアを実施できるよう今後の養成カリキュラムに追加することや、より高度な知識や技術を持った介護福祉士の上級資格を創設することが話し合われ、出席委員の間で大筋で了承された。
たんの吸引や経管栄養などの医行為実施については、介護職員を対象に特別養護老人ホームや有料老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームなどで試行事業を実施することが「第4回介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会(8月9日開催)」で決定している。
これを受けて、今後、養成される介護福祉士に対してはこれら医行為のカリキュラムを追加することが事務局側から提示され、出席委員の同意を得た。介護福祉士の資格をすでに持っている人については、一定の追加的な研修を修了した場合に限り、たんの吸引などを認める。
厚生労働省は、カリキュラム追加など本検討会の意見を「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」に提出すると決定したが、介護福祉士が実施できるたんの吸引や経管栄養などの範囲・条件については、今後詳細を詰めていく。
このあと、「より高度な知識や技術を持った介護福祉士の養成」について意見交換が行われた。
同省は、看護師や社会福祉士に“専門”や“認定”など上級資格が設けられている資料を提示し、より高度な知識や技術を持った介護福祉士として新たな資格を設ける場合、幅広く対応できる適応範囲の「広さ」か、専門性の「深さ」を追求するのかなど、資格の方向性について委員らに意見を求めた。
馬袋秀男委員(全国介護事業者協議会理事長)は、「介護職以外に看護師も足りないといわれる中、600時間の研修教育を実施し、7,000名を超える認定者を確保した認定看護師が、ここまでくるまでにどういう段階を経たのか先に創設された制度に学ぶべきだ。事務局は認定看護師制度創設に至る過程を調査してほしい」と要請した。
因利恵委員(日本ホームヘルパー協会会長)は、「私は20年ヘルパーをやったが重度障害や認知症などの利用者に対し、サービスはできても質の絶対的な自信はない。介護福祉士もこうした重度障害や認知症など特定分野への特化を目指すべき」と発言。
これに対し、桝田和平委員(全国老人福祉施設協議会介護保険委員会委員長)は、「調理師にも“専門調理師”がいるが、この資格があるからといって一般論で食事店を選んでいるか。はっきり言って創ったもののコケた資格も世の中にはある。結局、中途半端な専門知識となるよりは、他の介護職を指導できるリーダー的な存在として3〜5年経験の介護福祉士ががんばったら取れるというレベルでスタートを切ったらどうか」と提案した。
藤井賢一郎委員(日本社会事業大専門職大学院准教授)も、「介護はチームで行うもの。現場のチームが動けるようにリーダーとして指導できる方がよいのではないか」と桝田委員の意見を後押しした。
石橋真二委員(日本介護福祉士会会長)は、「高い知識だけではなく、実際に“できる”技術を持っていることが重要」と述べ、廣江研委員(全国社会福祉施設経営者協議会介護保険事業経営委員長)は、「創設する上級資格は、現在の介護福祉士有資格者にとって専門学校などに通学して取得するのではなく、現場で働きながら取る資格であることを検討すべき」と、現職への負担を憂慮した。
駒村康平座長は、「より高度な知識や技術を持った介護福祉士の養成については、次回会議で議論を深める」とまとめ、閉会した。
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