高齢者に対する自動車の運転免許証の自主返納の促進が話題となる中、改めて移動手段として注目されているのが自転車だ。しかし、この自転車の運転にも高齢者特有のリスクがあるとする調査結果が公表された。調査では、高齢者の自転車事故は年間2万件弱も発生している上、他の世代と比べるとハンドル操作のミスや転倒事故が多い傾向が見られるとしている。
調査結果を公表したのは、自転車の安全な利用方法などの啓発活動に取り組むため、大学研究者やジャーナリストらで組織する「自転車の安全利用促進委員会」。同委員会では交通事故総合分析センターから提供を受けたデータに基づき、2015年に発生した自転車事故について分析した。
その結果、15年に発生した自転車事故は9万8700件あったが、65歳以上の高齢者が巻き込まれた事故は、その約2割に相当する1万9510件だった。
高齢者の事故の形態で多数を占めたのは、他の世代と同様、「出合い頭」だった。また、高齢者の事故の発生場所も他の世代と同様、「比較的交通量が少ない歩道のない裏道交差点」での割合が一番高かった。
一方、調査結果では、高齢者の自転車事故の特徴として、ハンドル操作を制御できなかったり、自分の思いと違う方向のハンドルを切ってしまったりする「ハンドル操作ミス」が多いことも示されている。ハンドル操作ミスを原因とする事故は、全世代では1.9%だったが、高齢者に限定すると、その割合は4.7%となった=グラフ=。
さらに、自転車からの転落事故は年間で1320件発生していたが、その45%にあたる600件を高齢者が占めていた。同様に自転車からの転落事故は175件発生していたが、その半数以上にあたる93件が高齢者の事故だった。
■軽量で低重心の電動アシスト自転車の使用を推奨
この結果を踏まえ、同委員会は、高齢者が安全に運転する上でのポイントとして、▽自動車・歩行者・その他をしっかりと認知するよう努める▽ハンドルやブレーキなどの操作に余裕を持った運転を心掛ける▽夜道はできる限り避ける。夜間運転する場合は必ずライトを点灯する-といった注意点を改めて提示。
さらに坂道などのふらつきを抑えるため、軽量で重心が低い電動アシスト自転車の使用も推奨している。ただし、電動アシスト自転車の中には、アシスト比率が道路交通法の基準を超えているものも販売されていることから、同委員会では、電動アシスト自転車を選ぶ際には、安全基準に適合した自転車に付けられる「BAAマーク」の有無も確認すべきとしている。