東京都内の特別養護老人ホーム(特養)のうち7割余りは、希望者がおかれた状況より、その要介護度を優先し、入所を認めるかどうかを判断している-。そんな実態を示す調査結果を、東京都の高齢者福祉施設協議会が公表した。
特養に新たに入ることができる人は、原則要介護3以上の中重度者となっている。ただし、希望者の状況によっては要介護1や要介護2の人でも入所することはできる。
この制度や、重度者の受け入れが算定の際の重要な要件となる「日常生活継続支援加算」が、特養の入所者や特養の運営方針に与えた影響を探るため、東京都の高齢者福祉施設協議会は、6月から7月にかけて、都内の特養475施設にアンケート調査を実施。82.3%の391施設から回答を得た。
新規の入所者の受け入れについての優先事項を尋ねた質問では、「要介護3、4、5といった要介護度を優先する」と答えた特養が73.2%を占め、「介護度に関係なく状況次第で入所させる」(21.6%)を大きく上回った。
■「要介護1の入所者はゼロ」は4割超
また、要介護1の人の入所状況を尋ねたところ、0人と回答した特養は41.9%あった。要介護2の入所者が0人の施設も12.3%あった。
(調査結果の報告会 29日)
認定更新によって入所者が要介護1や要介護2となった場合の対応について尋ねた質問では、9割余りの事業所が「退所した人はいない」と回答したが、「退所した人がいる」という特養も12施設あった。
■「制度がソーシャルワーク機能をゆがめている」-結城教授
この結果について、アドバイザーとして調査に関わった淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は、特養が本来果たすべきソーシャルワーク機能が、制度によってゆがめられている側面があると指摘。その上で制度や報酬のあり方を改めて見直すよう強く訴えた。