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不眠の相談・報告、ケアマネの9割が経験―治療薬の服用に不安も

本人や家族、サービス事業所などから、利用者の不眠に関する相談や報告を受けたことがあるケアマネジャーが全体の約9割に上ることが、MSD（東京都千代田区）が行った在宅介護の睡眠に関する実態調査で分かった。医師が処方する不眠症治療薬の服用については、利用者の睡眠のために必要だとする「肯定派」が最も多かったが、利用者の状態によって薬を見直す必要があるとする回答も6割近くを占め、服用による転倒リスクの増大などに不安を抱える現場の実態も浮かび上がった。

同社は6－7月、インターネットインフィニティ―に委託する形で、全国のケアマネ828人を対象にインターネット上で調査を実施。このうち経験年数が1年以上で、不眠症治療薬を服用している在宅の要介護高齢者を担当する500人を抽出し、利用者や同居する家族の実態を尋ねた。調査対象となった利用者の数は5328人。

本人や家族、サービス事業所などから、「夜寝付けない」「夜中に目が覚めてしまう」といった利用者の不眠に関する相談や報告を受けたことがあるか調べた結果、全体の89.4%が「ある」と回答。相談相手は「利用者本人」が9割近くを占めた。

また、利用者と同居する家族・親族から、夜間介護の疲労や負担に関する相談を受けたことがある人も全体の89.6%に上り、相談内容は「ポータブルトイレやお手洗いへ連れていく際の移動や移乗」（60.1%）が最も多かった。

■服用の相談、「ある」が7割超

不眠症治療薬の服用について、回答者の考えに近い項目を選んでもらったところ（複数回答）、トップは「利用者が眠るために必要」（67.4%）で、以下は「利用者の状態によっては適正な薬への見直しが必要だ」（57.8%）、「同居者の夜間介護の負担を減らすために必要」（55.6%）、「心配や不安を感じる」（29.0%）、「できるならば服用を中止できるように取り組みたい」（27.0%）などの順。

このうち、「利用者の状態によっては適正な薬への見直しが必要」「心配や不安を感じる」「できるならば服用を中止できるように取り組みたい」のいずれかを回答した359人に、利用者の不眠症治療薬の服用について相談したことがあるか尋ねた結果、「ある」が全体の76.0%に達し、相談相手は「医師」（72.9%）が最も多かった。

■医療と介護が連携して問題解決を

MSDは26日、東京都内でメディアセミナーを開き、報道関係者に調査結果について報告。在宅医療の専門家らを招いて行われたトークセッションでは、久留米大医学部神経精神医学講座の内村直尚教授、東大医学部在宅医療学拠点の山中崇特任准教授、一般社団法人ナースプラネットの今村真弓さんの3人が意見を交わした。

加齢に伴う代謝機能の低下や体内時計の乱れなどで、高齢者の眠りは次第に浅く、短くなっていく。不眠には、寝付きが悪くて眠りに入れない「入眠困難」、夜中に目が覚める「中途覚醒」、早朝に目が覚める「早朝覚醒」の主に3つがあるが、高齢者の転倒リスクは「入眠困難」で約1.5倍、「中途覚醒」で約2倍に高まるとする海外の調査結果もある。

一方、不眠症治療で睡眠薬を服用した結果、特に認知機能が低下している高齢者では、転倒やせん妄を発症するリスクが高まるとする調査もある。また、長期の服用によって依存症となり、生活のリズムが夜中にずれると、介護する側の家族の負担が増すことも考えられる。

今回の実態調査では、不眠に関する相談や報告を受けたケアマネの多くが、利用者の日中・夜間の足元のふらつきや転倒を不安に感じており、その原因として、「医師から処方された薬の影響」を挙げる人も7割超に上った。

トークセッションで山中さんは、「昼と夜の生活リズムにメリハリを付けることが一番大切だ」と指摘。また、主任ケアマネと看護師の資格を持つ今村さんは、「介護だけでなく、ドクターも薬剤師も看護師もヘルパーも、さまざまな人がチームで情報共有を行い、トラブルを早期発見することが大事だと思う」と話し、内村さんも「医療だけでなく、介護の力も借りて高齢者の生活の質を高める必要がある」と語った。