富士フイルム株式会社は、7月19日、アルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」について、米国臨床試験にて、軽度から中等度の患者の認知機能低下の進行を大幅に抑制する効果を確認したと発表した。
現在、アルツハイマー型認知症の治療薬に用いられているアセチルコリンエステラーゼ阻害薬などは、神経伝達能の増強などによる一時的な症状改善にとどまっており、新たな治療薬の登場が待たれている。
「T-817MA」は、富士フイルムグループの富山化学工業が見出した治療薬で、病態動物モデルにおいて高い治療効果を発揮することが確認されていた。2014年より米国第II相臨床試験を実施し、罹病期間が短い患者群での認知機能低下の進行の抑制、神経細胞死を引き起こすたんぱく質「リン酸化タウ」の脳せき髄中における減少、記憶や空間学習に関わる脳の「海馬」の委縮抑制という臨床効果を統計学的有意差をもって確認することができた。また、マサチューセッツ総合病院神経科の研究において、「T-817MA」が脳内での免疫防御を担うミクログリア細胞に作用し、アミロイドβの排除を促進することも明らかになった。
これらの結果から、「T-817MA」はアルツハイマー型認知症の主要な原因物質であるタウたんぱく質やアミロイドβに作用し、アルツハイマー型認知症の病態の改善に関与することが示唆された。
今後、同社は、FDA(米国食品医薬品局)を含めた規制当局と協議し、第III相臨床試験に向けて検討を進めていく。
◎富士フイルム株式会社 ニュースリリース
http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1205.html?_ga=2.76809616.404111143.1500466490-1697157088.1500466490