京都大学は、6月1日、同大医学研究科の研究グループが孤発性小血管性認知症の発症機序の一部を解明したと発表した。
家族の中に発病者がみられない孤発性の小血管性認知症では、高血圧や糖尿病などによる細い血管の動脈硬化によって血流が滞り、脳内の白質が障害されることで、認知機能の低下につながる。
今回、小血管性認知症の患者7名と認知症ではない同年代の6名の脳内を解析したところ、患者の脳の血管内では、骨形成を促すBMP4と呼ばれる分子が通常よりも多く発現していることを発見。また、細胞実験と動物実験を行い、脳に届く血液の量が減少すると脳血管の細胞からBMP4が多く分泌され、脳の障害や認知機能の低下につながる可能性があることを見出した。さらに、脳の血液量を減少させたマウスにBMP4の作用を抑える薬を投与すると、脳の障害を改善させることも確認した。
このように、小血管性認知症の発症機序の一部を解明したことで、これまで生活習慣の改善や血流改善の薬など予防的なアプローチしかなかった小血管性認知症に対し、初期段階で治療に介入できる可能性が生じた。今後研究グループは、 BMP4の増加による認知機能への影響や、BMP4の抑制作用が認められている薬が血管性認知症の治療に使えるよう研究を続けていく。将来的には、血管障害を合併するアルツハイマー病の治療法の開発につながることも期待できるという。
◎京都大学 研究成果
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/170601_1.html