九州大学は、11月30日、生体防御医学研究所の岡素雅子博士、中別府雄作教授らの研究グループが、ミトコンドリアDNAを安定に保つことでアルツハイマー病の原因が抑制されることを発見したと発表した。
これまでに、アルツハイマー病患者の脳では、神経細胞にアミロイドβが蓄積し、ミトコンドリア機能が低下するために神経機能障害が引き起こされる可能性が指摘されていた。しかし、ミトコンドリア機能を維持することで、アルツハイマー病の症状や神経変性が改善されるかどうかは不明だった。
今回、研究チームでは、ミトコンドリアDNAに結合するたんぱく質の「ヒトTFAM」に着目。ヒトTFAM をヒトiPS細胞から樹立したアルツハイマー病モデル神経細胞に投与したところ、アミロイドβの蓄積が抑制され、神経突起の伸長が促進された。この時、活性酸素の生成が低下、ミトコンドリアDNAの酸化損傷も減少し、ミトコンドリア障害の悪循環がなくなっていた。また、ミトコンドリアの機能が改善されることで、アミロイドβの蓄積を抑制するトランスサイレチンの発現が上昇することがわかった。
さらに、アルツハイマー病モデルマウスにヒトTFAMを発現させたところ、1年以上経っても認知機能障害は認められず、アミロイドβの蓄積を抑えるトランスサイレチンの発現が誘導され、アミロイドβの脳内蓄積が減少することも確認された。
今回、アルツハイマー病の原因が抑制されるメカニズムの一端が解明されたことで、新たな治療法の開発につながることが期待される。
◎九州大学 プレスリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/66