東北大学はこのほど、アルツハイマー病の治療薬であるメマンチンが脳インスリンシグナルを改善することを発見したと発表した。
東北大学大学院薬学研究科の森口茂樹講師、福永浩司教授らの研究グループによる。
現在、アルツハイマー病治療薬として、ドネペジル(アリセプト)に代表される3種類のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬と、グルタミン酸受容体(NMDA受容体)阻害薬であるメマンチン(メマリー)が承認されているが、根本治療薬は存在していない。
メマンチンは2011年に承認された最新の治療薬で、脳に局在するグルタミン酸受容体(NMDA受容体)を阻害し、グルタミン酸による興奮性神経伝達の過剰興奮を抑え、シナプス伝達ノイズを除去すると考えられている。
今回、研究グループは、メマンチンの新しい作用機序として、脳内インスリンシグナルに関わるATP感受性カリウムチャネル(Kir6.1/Kir6.2チャネル)を阻害することを発見。ATP感受性カリウムチャネルは糖尿病治療薬であるスルホニル尿素系薬剤(グリベンクラミドなど)が作用するカリウムチャネルであることから、この発見は、メマンチンが脳のインスリンシグナルを改善することを示す。
研究成果は、アルツハイマー病が脳内インスリンシグナルの破綻であるとする「脳糖尿病仮説」を実証したものであり、脳のKir6.2チャネルをターゲットにしたアルツハイマー病の新規治療薬の開発が期待されるという。
◎東北大学プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/11/press20161104-02.html