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低所得層のユニット入居について意見紛糾――介護給付費分科会

厚生労働省は9月21日、第69回社会保障審議会介護給付費分科会を開催し、「一部ユニット型施設の基準などに関する審議のとりまとめ（案）」（以下、とりまとめ案）を提出。この日は、これをベースにディスカッションを行い、概ね、了承された。

とりまとめ案の基本的な考え方は次のとおり（一部抜粋）。

■基本的な考え方
介護老人福祉施設（特別養護老人ホーム）は、要介護状態となった高齢者が人生最期の数年間を過ごす終の棲家であり、要介護高齢者の尊厳保持の観点から、新設の施設については個室とすることが必要。

ユニット型施設の推進方策の強化を下記のとおり図る必要がある。
1）生活保護受給者も入所できるような実態となることを前提に、介護老人福祉施設の居室定員を、省令基準においては「1名」とするよう検討すべき
2）介護老人福祉施設の整備に係る助成をユニット方施設に重点化すべき
3）平成24年度以降、介護老人福祉施設の施設整備助成はユニット型施設に限定することを検討すべき
4）ユニット型施設の介護報酬について、次期介護報酬改定では、ユニット型施設の整備推進の方針を踏まえて検討すべき
5）低所得者がユニット型施設に入居しやすくなるよう、社会福祉法人などによる生活困難者に対する介護保険サービスにかかる利用者負担額軽減制度の推進方策を検討すべき
6）5）の制度により、生活保護受給者もユニット型施設に入居しやすくなるよう、支援のあり方を検討すべき
7）低所得者の居住費負担の軽減策について、補足給付の在り方は介護保険部会の議論を踏まえる必要があるが、低所得者のユニット型施設の利用対応策については、施設類型・所得段階ごとの公平性を踏まえながら介護給付費分科会で検討することが必要

意見が集中したことの1つは、低所得者に対する支援についてだった。
日本医師会常任理事の三上裕司委員は「低所得者に補助が出ることを確約できるのか？」と、厚生労働省事務局に質問。また、全国町村会長の藤原忠彦委員も、「低所得者対策、生活保護受給者への対策について記載はあるが、居住保障、支援のあり方を早急に検討すべき」と意見した。

また、とりまとめ案では、介護老人保健施設、介護療養型医療施設についての記載もあり、全国老人保健施設協会会長の川合秀治委員は、「終の棲家である特養は個室であるべきだが、介護老人保健施設は在宅への復帰に向けて機能を維持するための施設。全室個室ユニットである必要性はあるのか？これまでの議論の中で共通認識を得られたと思っていたが…」と、不満を漏らした。
これを受けて厚労省事務局は、とりまとめ案の「ユニット型施設の今後の検討項目」における「施設の進捗状況を踏まえた上で」という表現を、「施設の進捗状況・介護保険施設の機能などを踏まえた上で」と変更することを約束した。

ただし、他の委員からは、「在宅復帰するための施設だからこそ、在宅同じにすべきでは？」「期間が短いから、終の棲家ではないから多床室でよい、というのはおかしいと思う。建物は一度建てると40年、50年と建っているため、ここでしっかり検討すべき」といった声が挙がった。

このほか、看護職員の兼務の問題についても、議論がなされた。
とりまとめ案では、特別養護老人ホームについては「ユニット型施設と従来型施設を併設した施設のうち、介護職員と同様にケアを行う看護職員については、兼務を認めない」と記載されたのに対し、介護老人保健施設、介護療養型医療施設に関しては、「ユニット型施設の入居者、併設された従来型施設の入所者の処遇に支障がない場合、兼務を認めることとする」とされた。

これに対して、日本看護協会副会長の井部俊子委員は、「なぜ、（介護老人保健施設、介護療養型医療施設では）兼務を認めるのか？」と疑問を呈した。「日勤帯、夜勤帯で役割、仕事が違うから（兼務が可能）」と回答した川合委員に対し、「役割が違うからこそ、兼務を認めないべきでは？」と井部委員が反論する場面があったが、「セクションごとに固定するのが一番よいが、現実問題は無理だろう」といった指摘が他委員から挙がった。

会の終了に際し、東京大学名誉教授の大森彌分科会長は、「これでとりまとめということで」と、とりまとめ案で概ね了承したことを確認した。