日本気象協会と名古屋工業大学、東北大学の共同研究グループは、7月23日、乳幼児や高齢者などの個人特性を考慮した熱中症リスクを評価する技術を開発したと発表した。
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研究では、名古屋工業大学が、個人特性を考慮した熱中症リスク評価のための「複合物理・システムバイオロジー統合シミュレーション技術」を開発。この技術を東北大学サイバーサイエンスセンターのスーパーコンピュータが効率的に実装・高速化し、日本気象協会が提供する気象予測データを用いることで、ある時間から3時間経過後にかけての熱中症リスクの変化の様子を10分で評価することが可能になった。
具体的な評価事例として、熱中症の患者数が急増する梅雨明けの猛暑日(2014年7月25日10時~12時、気温35℃以上)に、3歳児、成人(男性、女性)、高齢者(65歳、75歳)を対象にシミュレーションを行い、3時間後の体表面温や体内深部温度(体温)の時間変化に着目した。
その結果、成人に比べて、3歳児や高齢者(特に75歳高齢者)では体温の上昇が顕著にみられた。また、発汗量の変化についても、高齢者(特に75歳高齢者)は、成人や3歳児に比べ、発汗し始めるまでに時間がかかり、その後の発汗量も少ない状態が続くことが示された。体温の上昇・発汗量の少なさは熱疲労、ひいては熱射病へとつながり、重篤な状態になることもある。
このように、従来の手法では考慮が困難であった年齢別のリスク評価が短時間で可能になり、大規模イベントなど場面に応じた熱中症の発生数の低減も期待できるという。今後研究グループでは、研究で得られた知見を広く一般に発信し、熱中症リスク評価技術を有効に活用する方法を探っていくとしている。
◎日本気象協会 ニュースリリース
http://www.jwa.or.jp/news/2015/07/post-000536.html