京都大学は、7月22日、医学研究科の柳田素子教授、佐藤有紀特定助教らの研究グループが、高齢者の腎臓病における新たな病態メカニズムを発見したと発表した。
慢性腎不全を発症すると、週に数回、血液透析のために医療機関に通院する必要があり、患者の負担は小さくない。透析導入に至る患者の平均年齢は67歳と高齢であり、高齢化社会が進展するなか、医療的にも社会的にも大きな問題となっているが、高齢者の腎臓病は若年者と比べて治りにくいとされ、その原因は明らかになっていなかった。
研究グループは今回、マウスでの実験で、高齢マウスの腎臓病では、腎臓の中に「3次リンパ組織」というリンパ節のような組織ができることで炎症が遷延し、腎臓が修復できなくなることを発見。その3次リンパ組織を除く治療をすれば、高齢マウスでも腎臓が修復しやすくなり、予後が改善することを明らかにした。さらに、ヒト高齢者の腎臓の3割近くにこの3次リンパ組織があること、その構成成分はマウスで解明したものと非常に似通っていることも見出した。
研究グループはかつて、健康な腎臓に存在する「線維芽細胞」の性質変化が、腎臓の線維化と腎性貧血を引き起こすことを報告しており、今回、この線維芽細胞の振る舞いが加齢に伴って変化し、3次リンパ組織を誘導することも突き止めた。このことは、3次リンパ組織を標的とした治療法が高齢者の腎臓病の回復を促し、透析導入を遅延させる可能性を示唆しており、高齢者腎臓病の新たな治療戦略の可能性につながるとしている。
◎京都大学 研究成果
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/160721_1.html