日本介護支援専門員協会は、3月4日、認知症の男性の列車事故に絡む訴訟で下された最高裁判所の判決に関し、声明を発表した。
声明では、今回に判決で「介護支援専門員の社会的役割を深く胸に刻む機会をいただいた」との認識を示した。
―以下、全文―
愛知県内で認知症の男性が外出中に列車にはねられ死亡した事故をめぐり、遺族がJR東海から損害賠償を求められた訴訟で、このほど最高裁判所が賠償責任はないとする判決を言い渡しました。
今回の最高裁判決は、認知症高齢者がますます増えていくことが避けられない日本社会の現状から、認知症高齢者やその家族を社会から隔絶するのではなく、社会全体でともに生きていくことを司法が宣言したものだと思います。
判決では、認知症の人を介護する家族の民法上の監督責任について「同居する配偶者だからといって、直ちに当たるわけではない」「認知症の人との関係性や、介護の実態などを総合的に考慮して判断すべきだ」との基準を示しました。
一方、認知症の人への介護を家族がどれだけ努力していたかによって、今後も新たな賠償請求訴訟が起こされる余地を残していることも見逃せません。
認知症の高齢者がすでに500万人を超え、2025年には 700万人に達すると予測される中、認知症の人の事故をどのように防ぐのか、事故があった場合の損害をどう救済するのかといった社会的な仕組みづくりも必要です。
私たち介護支援専門員は、要介護高齢者やご家族を支援する専門職です。
超高齢社会が進行するなか、地域包括ケアを担い、認知症をはじめとした要介護高齢者やご家族に寄り添い、適切なチームケアが提供される環境をつくることが求められています。
今回の最高裁判決は、これからの社会のあるべき方向性を示すとともに、私たち介護支援専門員の社会的役割を深く胸に刻む機会をいただいたものと考えます。