認知症高齢者の列車事故、家族に賠償責任なし―最高裁判決

3月1日、認知症高齢者の列車事故で家族が損害賠償を求められた訴訟の上告審で、最高裁判所は家族に賠償を命じた二審判決を破棄し、JR東海の請求を棄却した。

認知症の男性高齢者は2007年の事故当時91歳で、要介護4の認定を受け、同居する妻と近隣に住む長男の妻の見守りを受けながら在宅で暮らしていたが、徘徊によって線路内に入り込み、電車と衝突。列車輸送に損害を与えたとして、同居する妻と介護方針に関わっていた長男が損害賠償を求められていた。
民法714条1項では,責任能力のない者が他人に損害を加えた場合、その者を監督する法定義務を負う者が損害賠償責任を負うべきと規定されている。裁判では、認知症の人の監督義務が争点となり、一審では妻と長男に、二審では妻のみに監督義務があるとして賠償を命じる判決が下され、家族、JR東海ともに判決を不服として上告していた。

上告審では、二審で監督義務者と認定した妻は、精神保健及び精神障害福祉法や夫婦の協力及び扶助の義務を規定した民法によっても、責任無能力者を監督する義務を負う者に当たらないとした。また、妻が当時85歳で要介護1認定を受け、長男の妻の補助で介護していた状況から、責任を問うのが相当な監督義務者に準ずる者でもないとした。
長男については、20年以上認知症の男性と同居しておらず,事故直前の時期も月に3回程度男性宅を訪ねていた状況から、監督義務者に準ずべき者に当たらない、として二審の判断を指示した。

判決は裁判官全員一致の意見によるが、個別の裁判官の意見として、介護方針の決定に関与していた長男は監督義務者に準ずるとの見解があった。その場合、倍賞責任を負うか否かは、監督義務を怠っていたかどうかが焦点になり、過去に2回徘徊によって警察に保護された認知症男性に対し、週6回のデイサービスの利用と認知症男性の妻と長男の妻が日々の介護や見守りを行う体制を組むことで、徘徊を防止する義務を履行していた、と述べた。

責任能力のない認知症の人の家族を監督義務者と認定しなかった判決は、認知症介護の実態を踏まえた意義のあるものだが、ケースによっては監督義務者に準ずると認定される場合もあるようだ。認知症の人の安全を守り、第三者への損害を防ぐために、在宅介護の体制を家族が構築できるかどうかは個別の事情にもよる。日々家族を支援する地域や社会のあり方が重要と言えそうだ。

◎最高裁判所2016年3月1日損害賠償請求事件判例
http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/rinji_hanrei_280301.pdf

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