「公費負担増は不可能」で保険料増は必須?――部会傍聴レポ2

「給付と負担の在り方について」を議題に、9月6日に開催された第31回社会保障審議会介護保険部会、後半は給付の在り方についての見直しについて議論された。

給付の在り方については、北村俊幸委員(民間介護事業推進委員会代表委員)が特定入所者介護サービス費(補足給付)を挙げ、「在宅分野でも施設のような低所得者対策をしてほしい」と、施設と在宅の給付バランスの悪さを指摘。すると、葛原茂樹委員(鈴鹿医療科学大学保健衛生学部医療福祉学科特任教授)も、「施設のほうが自己負担額が少なくて済む現状では、在宅化は進まない」と、施設が優遇されているかのような現状の給付配分について疑問を呈した。

久保田政一委員(日本経済団体連合会専務理事)は、「現役世代の活力が殺がれる可能性があるため、保険料引き上げには反対」とし、代わりに「もっと必要不可欠なサービスに絞ってはどうか」と意見を述べた。

木間昭子委員(高齢社会をよくする女性の会理事)は景気の低迷を鑑み、「低所得者の軽減措置をもっと推進すべき」と述べた。また、介護予防事業を含む地域支援事業の財源構成(介護予防事業705億円、包括的支援事業・任意事業1,304億円 いずれも2010年度予算額)を挙げ、「地域支援事業はすでに行政の助けを借りずとも市民自ら行っているところは多い。わざわざ介護保険の財源でやる必要はないのではないか」と指摘した。

三上裕司委員(日本医師会常任理事)は、2008年度給付費2,397億円だった特定入所者介護サービス費(補足給付)を挙げ、「介護保険で使わなくてもいいものに保険料が使われている。たとえば施設の居住費と食費は本来生活扶助で行うべきもので、これだと生活保護受給者も個室ユニットに入れる仕組みになっており、介護保険で賄うのは筋が違うのではないか」と指摘。

さらに桝田和平委員(全国老人福祉施設協議会介護保険委員会委員長)も、介護給費の5%相当部分を財源とし、市町村の責めによらない保険料収入不足と給付費増を調整する仕組みとしての調整交付金(2010年度予算額3,652億円)について触れ、「現状は財源構成の枠内に入っているが、施設の場合、都道府県と国との負担割合が異なるため、枠外でプラス分として出してもらったほうがいい」と述べた。

また、前半の「公費負担額のアップを」と述べる委員が多かったのに対し、土居丈朗委員(慶應義塾大学経済学部教授)が、「国費増を伴う介護保険法等の改正法案は、来年の通常国会に提出できない恐れがある。なぜなら、国費増によって給付の充実を行うなら、財源を確保できない限り、来年度の通常国会で改正法案を通して、2012年度の実施にむけて準備するという段取りができない」と、給付増と負担増の両立が現実的には難しいことを指摘し、「給付の充実を図るには、現行どおり公費負担割合は50%を維持することが重要」だと述べた。

これまでの議論に水を差すような土居委員の意見に、他の委員からは「(公費負担増は)本当に不可能なのか」と事務局に言い寄る場面もあり、現実問題として次期改正では給付抑制か保険料負担増は避けられない結果が予測され、さらなる議論が望まれる。

■部会傍聴レポート1
「財源確保には公費負担増を」多くの委員が同意――部会傍聴レポート1 

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