慶応義塾大学は、11月6日、岡野栄之教授(医学部生理学教室)らと順天堂大学の赤松和土特任教授(大学院医学研究科ゲノム・再生医療センター)らの共同研究グループが、ヒトES/iPS細胞から、脳・脊髄にある特定の神経細胞を作製できる新技術を開発したと発表した。
この技術により、神経の難病であるアルツハイマー病やALS(筋萎縮性側索硬化症)の新薬開発などの研究に役立てることができるという。
アルツハイマー病では大脳皮質ニューロンが、ALSでは脊髄運動ニューロンが障害されることが知られている。研究グループは、ES/iPS細胞から神経細胞を作製する過程で、前脳から脊髄に至るあらゆる脳領域を作り分ける技術を利用して、アルツハイマー病とALSの患者から樹立したiPS細胞から、さまざまな脳領域の神経細胞を作製した。
その結果、実際の患者の症状と同様に、アルツハイマー病患者由来iPS細胞から作製した神経細胞では大脳皮質ニューロンで、ALS患者由来iPS細胞から作製した神経細胞では脊髄運動ニューロンで障害が認められた。
この脳領域をコントロールして神経細胞を作り分ける新技術は、特定の部位で生じる神経疾患の症状を効率的に再現する新たな研究手法として期待できるという。
◎慶応大学プレスリリース
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2015/osa3qr0000016tfe.html