厚生労働省は、8月27日、2010年度版「厚生労働白書」を公表した。
白書は2部構成になっていて、第1部は「厚生労働省改革元年」と題し、「役所文化を変える」との決意を表明。「消えた年金」などの年金記録問題や薬害肝炎事件などに対して、「信頼を失墜させてしまった」と国民におわびした上で、厚生労働行政の反省点を挙げ、信頼回復のために「恒常的な無駄見直しのための部署の設置」「国民の声を施策に反映させるための部署の設置」「ハローワークや年金事務所のサービスコンテストの実施」など、厚労省や日本年金機構の組織改革を重点的に取り上げた。
第2部では、これまでの社会保障政策を「消費型・保護型」と定義して、「サービスが消費されるだけで何も生み出さない」と指摘。そこで、今回新たに提案している「参加型社会保障」では、「いつまでもいきいきと働きたい」「地域で暮らし続けたい」といった国民の主体的な思いに応えやすい仕組みを作り、それが結果的に雇用を生み出し、働き手を増やし、消費につながる「経済成長の基盤を作る未来への投資」だとしている。
具体的には、国民の思いを「いきいきと働く」「地域で暮らし続ける」「格差・貧困を少なくする」「質の高いサービスを利用する」という4つの目的にまとめ、地域に暮らす人々の暮らしがどうなっていくのかを図とシナリオ仕立てで説明している。
従来型と比較すると、雇用分野においては、従来の再就職支援では失業以外に住宅問題などを抱えていた場合の対応が困難だと指摘。「参加型」では、住宅手当や職業訓練を組み合わせて改善する。医療・介護分野では、最期まで自宅で暮らし続けられるように、従来型では不足気味だった在宅医療・福祉サービスを、「参加型」では中学校区等(全国約1万カ所)ごとに整備するとした。
【中学校単位の福祉サービスイメージ】
また、介護や社会福祉分野の経済成長に与える総波及効果は公共事業より高く、雇用を生み出す効果は主要産業よりも高いことを指摘し、経済成長の好循環をもたらすことを目指すとしている。
同省では、このような基本的な考え方に基づいて、新たな社会保障像の構築を目指して、さらに検討を進めていくという。
このほか、白書では、厚生労働行政の姿を身近に感じてもらうため、1問1答形式の「100人でみた日本」「日本の1日」や、親子で遊べる「厚生労働カルタ」など、わかりやすさを重視した中身となっている。