国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターは、9月16日、神経研究所疾病研究第四部の永井義隆室長らの研究グループが、パーキンソン病およびレビー小体型認知症の新たな発症メカニズムをモデル動物で初めて明らかにしたと発表した。
パーキンソン病は、国内の患者数約12~15万人、60歳以上の約100人に1人が罹患するとされる進行性の神経変性疾患。主に中脳黒質のドーパミン神経細胞が変性・脱落し、異常構造変化したαシヌクレイン蛋白質が蓄積したレビー小体と呼ばれる封入体が神経細胞内に認められる。現在、ドーパミン補充療法により一時的に症状を改善することができるが、病気そのものの進行を抑える治療法の開発には、発症に至るメカニズムの解明が待たれている。
近年の大規模な遺伝疫学研究により、糖脂質分解酵素の1つであるグルコセレブロシダーゼ(GBA)遺伝子に変異を持つ人は、変異を持たない人に比べてパーキンソン病を約5倍発症しやすいことがわかっている。また、アルツハイマー病に次いで多い認知症であるレビー小体型認知症においても、大脳皮質の神経細胞にαシヌクレイン蛋白質がレビー小体として蓄積することが知られており、GBA遺伝子変異を持つ場合、発症率は約8倍にのぼることが報告されている。
同研究グループは、GBAの機能低下がパーキンソン病の疾患の発症率を高める分子メカニズムを明らかにするため、パーキンソン病モデルのショウジョウバエの病態にGBA遺伝子の抑制がどのように影響するか調べた。その結果、GBAの働きが低下すると疾患モデルショウジョウバエの運動機能やドーパミン神経細胞の変性が悪化することがわかった。さらに、GBAの機能低下により糖脂質グルコシルセラミドが蓄積し、αシヌクレイン蛋白質がプリオン様異常構造化して、神経変性を悪化させることがわかった。
今回、パーキンソン病およびレビー小体型認知症の新たな発症メカニズムをモデル動物で明らかにしたことで、GBA酵素活性を高めることやグルコシルセラミドの産生を抑制することによる新たな治療・予防法の開発につながることが期待される。
また、GBA機能が加齢よって低下することから、脳内の脂質代謝を正常に保つ仕組みの解明がこれらの疾患の予防に役立つ可能性が考えられるという。
◎国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター プレスリリース
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release150916.html