市民福祉情報オフィス・ハスカップは、8月26日、「どうなる介護保険? No.2」として、認知症ケアのゆくえをテーマにしたセミナーを開催した。
CMOニュースでも毎回取り上げている、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会での議論を先取りし、今回は8月30日に開催予定の社保審部会テーマ「認知症者への支援のあり方」を、利用者視点で議論が盛り上がった。
問題提起を行ったのは、元社保審委員で評論家の沖藤典子氏、衆議院委員の石毛えい子氏、NPO法人暮らしネット・えん代表理事の小島美里氏、共に介護を学びあい励まし合いネットワーク代表の藤原るか氏らが、それぞれの立場から認知症ケアの現状を訴えた。
沖藤氏は、「認知症のゆっくりした進行を受け入れながら住み慣れた家で暮らしたいのに、現状の認知症施策の多くは、家を出て施設へ入ることで加算がつくなど、在宅で暮らし続けることを考えていない」と口火を切った。
それを受けるように、ヘルパー歴20年の藤原るか氏は、「認知症の人は認知症日常生活自立度IIIの人でも、要介護認定では要支援になってしまい、家族が望む支援がほとんどできない。また、認知症ケアは、誰かに悩みや不安を受け止めてもらうことが大切なのに、2006年度の改正で訪問介護は時間が短縮され、生活援助をしながら話を聞いてあげることができなくなった」と、ヘルパーの役割が評価されないことを憂いた。また、認知症の人は、その人の生活リズムを大切にすることが重要なのに、短時間のサービス提供という仕組みのなかでは、認知症ケアが十分でないことを指摘した。
小規模多機能事業所を運営する小島美里氏は、「家族会が10年以上ずっと言い続けてきた認知症ケアの充実も、結局十分ではなく、ついには家族会から“認定審査廃止論”まで飛び出した。審査する側を育てても育てても、報酬が低すぎてプロが育たず、皆辞めていってしまう」と、介護職の処遇の問題について触れた。
また、グループホームについても「当初はみんなで食事をつくることがブームのようだったが、今は入居者が皆、中重度になり、ターミナルがブームのようになっている。しかしターミナルを受け入れると医療主導になり、本来の“共同生活介護”から離れていく」と 、時間経過による変容を指摘。さらに、「認知症の人に使いやすいはずの小規模多機能は、まともなケアを提供すれば赤字になる仕組みで、訪問をやっていないところが多い」ことも問題視した。
国の方針は今後、「30分圏内で泊まりも通いも訪問も医療も」提供する地域包括ケアを推進していくが、これも提言者のなかからは、「24時間巡回型介護といっても、認知症の人に毎回違う人がやってきて15分でおむつ交換だけして帰っていくことが、本当によいケアなのか」という意見が飛び出し、それを受けて、8月23日の厚生労働省社会保障審議会介護本件部会で出た「お泊りデイ」(宿泊可能なデイサービス)の整備については、「小規模多機能と拮抗する」「認知症の人、夜も日中の職員が対応しないと混乱する」「職員の処遇は保障されるのか」といった意見が交わされた。