厚生労働省は8月23日、在宅・地域密着型サービスのあり方をテーマに第29回社会保障審議会介護保険部会を開催し、緊急時対応や介護者である家族の休息のための一時預り“レスパイトケア”の対策として、デイサービスでの宿泊を認め、24時間の受け入れを可能とする案を示した。
「お泊りデイサービス」の名称で示された案は、既存のデイサービスの利用時間を現状の10時〜17時から10時間以上延長し、“通い”でも“泊まり”でも利用できる24時間体制とするもの。
利用者は顔なじみのスタッフがいる通い慣れた設備で宿泊することができ、急な残業や通勤などでデイサービスの送迎時間に間に合わない家族の負担を軽減し、レスパイトケアの充実を図る。従来のショートステイもこれまでどおり利用可能だが、緊急時に空きベッドを確保することは困難なため、デイサービスを利用して急な預かりニーズに対応する。
出席した委員からの意見では、桝田和平委員(全国老人福祉施設協議会介護保険委員会委員長)が「特別養護老人ホームの待機者がデイサービスで1カ月宿泊しているケースもある」と利用者の宿泊が常態化することを危惧し、「同案は小規模多機能型居宅介護事業所の“訪問”がないだけで“通い”と“泊まり”は共通だ。介護報酬的にも定額制の小規模多機能型との整合性はとれるのか」と指摘した。
木村隆次委員(日本介護支援専門員協会会長)は「ショートステイは半年前から予約を受け付けているが、それでも満員で利用者の預け入れにケアマネジャーは苦慮している」と現場の窮状を訴えた。
このほか、24時間地域巡回型訪問サービスについて河原四良委員(日本介護クラフトユニオン会長)は、「介護職は深夜・早朝に働くことになり、それに見合った対価や最低2人以上の訪問体制など労働環境の整備が重要」と訴えた。
木間昭子委員(高齢社会をよくする女性の会理事)はヘルパーの対応によって状態が改善した利用者の事例をいくつか示し、「20分未満の短時間訪問による援助では個々にペースも中身も違う利用者の生活を守れない」と発言し、勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)からも「認知症の人へのケア体制としては短時間巡回型の訪問介護は不向き」と反対意見が相次いだ。
これに対し、井部俊子委員(日本看護協会副会長)は、「必ずしも短時間の巡回が認知症のケアによくないとは言えないのではないか」と反論。また、厚生労働省のデータでは約30%の事業所で看護職と介護職が同時に訪問しており、複数名で訪問する理由に医療依存度が高いことが示されたが、こうした医療依存度の高い人々が緊急的に利用できる、“看護サービスを加えた24時間体制の小規模多機能型居宅介護”を提案した。
◎地域包括センター、直営化やケアマネへの委譲など――傍聴レポート2へ続く