「特養4人部屋は負の遺産」「雑居部屋とはなんだ」意見飛び交う

厚生労働省が8月20日に開催した、第76回社会保障審議会介護給付費分科会では、特別養護老人ホームで多床室とユニット型個室を併設した一部ユニット型施設について、自治体などのヒアリングに続いて委員らによる意見交換が行われた。

横浜市健康福祉局の立花正人局長は、多床室の問題点として「インフルエンザなど感染症対策でベッドの間隔を2メートル以上あけると4人部屋は個室になる」と指摘し、人生の最後の場で自分が選んでもいない他人と暮らさなければならず、同室者に気兼ねして会話も泣くことも自由にできないと、ようやく個室化の流れを国が示した個室化の流れを戻してはならないと述べた。
個室ユニットは低所得者対策に多床室を作るのではなく、補助給付の拡充や居住費補助で対応すべきと考える同市は、今年10月から独自の補助制度を実施するという。

特別養護老人ホームのユニット整備率が2009年度末で18.4%という香川県からは、ユニット型の入居者の個人負担は老齢基礎年金(約80万円)の2倍収入がある人でもユニット化に入所すると約33万円の自己負担が必要となることや、特養の申込者調査では経済性を理由に多床室希望者が5割以上だったのに対し、ユニット型は3割台とのデータが示された。
介護報酬の返還の是非については、厚生労働省が法律・省令ではなく通知としたことに対し「法的根拠が薄い」と非難し、基準日による制限ではなく、実態としてユニットケアが実施できていればユニット型介護報酬を認めるべきとの方針を表明した。

特養をよくする特養の会の池田徹代表は、同会で試算した結果、居室面積10.65平方メートルの「全室個室ユニット」が80人定員だった場合と、同じ居室面積で個室ユニット型と4人部屋を半々(各40人ずつ)とする「一部ユニット型」を建てた場合の86人定員と、6人しか増床できないと報告。
「わずかな定員増のために向こう40年近く使用する施設を4人部屋にすることは次世代に負の遺産を残すことになる」と訴え、待機者対策や低所得者対策として多床室整備のために一部ユニット型施設を新築することは合理的ではないと述べ、介護報酬の取扱いについては、ユニット型報酬が支払われた事業者には報酬の返還を求めるよう厚生労働省に要望した。

龍谷大学教授の池田省三委員は、従来型の多床室や一部ユニット型整備は待機者解消や低所得者負担軽減に必要とする東京都に、「全室個室だった“たまゆら”でもあの火災事故が起きたが、東京都が特養で“雑居部屋”を認めるのか」と質問。
福祉保健局高齢社会対策部の狩野部長は「経済的に困窮する生活保護受給者や低所得者はユニット型は現実には利用できないのが実態で多床室の整備もやむを得ない」と回答。
また「多床室イコールとんでもないケアが実施されているように思われているが、きちんとした手厚いケアが行なわれている施設も多い。高齢者のために一生懸命、都が努力しているのに“雑居部屋”とはなんだ。議事録から削除してほしい」と声を荒げた。

これらの委員意見を踏まえ、厚生労働省は9月6日に次回会議を開催し、一部ユニット型施設についての議論を深める。

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