医療経済研究機構の奥村泰之研究員らが行った研究結果より、認知症患者の5人に1人が抗精神病薬が処方されていることが、11月6日、明らかになった。
認知症患者では、妄想や幻覚、攻撃性などの行動・心理症状 (BPSD) が出現しやすく、諸外国では重度のBPSD に対して抗精神病薬の使用を認めている。しかし、死亡などの重篤な副作用を起こすおそれがあるため、近年では抗精神病薬の処方割合は大幅に減ってきている。
一方、日本では、抗精神病薬の適応は統合失調症などに限られているが、対応困難なBPSDには抗精神病薬が使用されているとみられる。
研究では、2002~2010年に認知症治療薬が処方された全国の65歳以上の認知症患者のレセプト15,591件が無作為に抽出され、向精神薬(抗精神病薬、抗不安薬、気分安定薬など)の使用状況が分析された。
その結果、2008~2010年は、抗精神病薬が処方された認知症患者の割合は21%で、2002~2004年と比べて微増傾向であった。
一方、BPSDに対して使用が推奨されていない抗不安薬や気分安定剤についても一定の使用が認められ、抗不安薬については、2008~2010年は12%の認知症患者に処方されていた。また気分安定薬であるバルプロ酸ナトリウムは、2002~2004年と比べて2008~2010年の処方は2.3倍増の1.9%の認知症患者に認められたという。
諸外国では認知症患者にほとんど使用していない抗不安薬や気分安定薬が使用されている実態が明らかとなり、医療経済研究機構は、これらの使用にあたっては注意が必要であると指摘している。
◎医療経済研究機構
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