京都大学の池田香織特定助教(医学部附属病院)と稲垣暢也教授(医学研究科)らは、内田由紀子特定准教授(こころの未来研究センター)、藤本新平教授(高知大学医学部)、Beth Morling准教授(米国Delaware大学)と共同で、日米の糖尿病患者の調査を行い、アジア文化で特徴的な協調性の重視が、糖尿病患者の心の負担を増す要因となっていることを発見した。
この研究成果は 、2015年1月15 日に米国の科学雑誌『PLOS ONE』で公開される。
人の行動を動機づけるものとして、北米人では個人の意思や能力の影響が大きいのに対し、アジアでは周囲との関係による影響が大きいことが、文化・社会心理学の研究からわかっている。
糖尿病治療においては、食事療法や運動療法といった生活習慣の変容をせまられるが、池田准教授らはこの文化的違いに注目し、日米の糖尿病患者における協調性や周囲の人との心のつながり、糖尿病の心の負担について調べた。
調査は、京大附属病院と米国デラウエア大学関連の基幹病院で、外来受診患者を対象に質問紙で行われた。
その結果、日本人糖尿病患者では協調性を重視する人ほど糖尿病による心の負担を強く感じる傾向があることがわかった。しかし、身近な人からの心のサポートを強く実感している人では、この負担感は小さかったという。
一方、米国人患者ではそのような関連はみられなかった。
協調性を重視する程度やサポート効果には個人差が大きいものの、池田准教授らは、アジアの糖尿病患者では身近な人からの共感や励ましが心の負担の軽減につながり、ひいては治療の成功に効果を発揮する可能性があると指摘している。