東京大学の野口都美客員研究員(研究当時は大学院生)と小林廉毅教授らは、産業保健現場の医師らとの共同研究により、歯周病の強く疑われる男性労働者は、そうでない者に比べて、心筋梗塞の発症が約2倍多いことを明らかにした。
この研究結果は、英国の医学雑誌『Journal of Public Health』(10月7日オンライン版)に掲載された。
研究は、金融保険系企業の36歳~59歳の男性労働者3,081人を対象に行われ、質問票を用いて歯周の状態を評価し、その後5年間の健康状態が追跡調査された。
その結果、歯肉出血、歯のぐらつき、口臭の3項目から歯周病の強く疑われる男性労働者は、そうでない者に比べて、心筋梗塞の発症が約2倍多いことがわかった。
歯周病は歯周組織におこる炎症性疾患の総称で、主原因は歯周病細菌群の感染であるが、生体側の因子(歯のかみ合わせ、免疫など)や環境的因子(喫煙、ストレス、食生活、歯周ケアなど)も発症・進展に関連する。
主要な症状は歯肉の発赤、腫脹、出血で、進行すると排膿(うみ)や口臭がみられ、最終的には歯の喪失につながる。
歯周病は、適切なセルフケア(歯磨きなど)や歯科メインテナンス(歯石除去、専門的クリーニング)で予防・改善できる。
虚血性心疾患の予防の観点からも、利用者の口腔ケアを適切に行いたいものだ。