アレルギー疾患対策の均てん化に関する研究班が行った、医師・患者双方の大規模全国調査の結果が、9月9日、医療サイト「QLife」で公表された。
それによると、アレルギー科と標榜していてもアレルギー学会専門医でない場合がかなりあり、非専門医でも専門医より多数の患者を診ているケースがあることがわかった。
また、ガイドラインから外れた治療をする医師も珍しくなく、非専門医だけでなく専門医にもみられた。
この調査は、患者側の要望を受けて厚生労働省と日本アレルギー学会が協力するかたちで実現された。
2014年2~3月の間に、医師・患者双方の視点から調査が行われ、有効回答は医師1,052人、患者8,240人であった。
【主な調査結果】
■アレルギー科標榜医がアレルギー学会専門医でない場合が少なくない
今回の調査回答者のうち専門医資格者は30%にとどまり、学会会員は52%であった。
入口に「アレルギー科」と表示している医療機関でも、アレルギー学会の専門医資格を持つ医師がいるとは限らないようだ。
■非専門医でも専門医より多数の患者を診ている医師がいる
専門医だからといって一概に患者数が多いわけでもなく、逆に非専門医の診療患者数が少ないわけでもないようだ。調査では、1週間に100人以上診るような医師でも、非専門医が占める割合のほうが多かった。
一方で、患者数の少ないアレルギー専門医がいることは問題ではない。免疫系の希少疾患や最重症の患者のみを診療している大学病院及び研究病院の医師には、そうした現象が起こりうるからだ。
■ガイドラインから外れた治療をしている医師がいる
診療ガイドラインの最新版の所持率は、小児気管支喘息が最も高く47%で、食物アレルギーが最も低く38%であった。専門医のほうが非専門医よりも所持率が高く、理解度も高い傾向にあった。
ところが実際の診療内容のなかにはガイドラインに外れたものも珍しくなく、かつそのような治療をする医師には専門医も含まれていた。
【ガイドラインに外れた診療内容の代表例】
■アトピー性皮膚炎
1)いまだにステロイド「使いたくない」患者が多数派
2)外用剤を「できるだけ薄くのばす」ほうがよいとの誤解が多い
3)1割が「入浴時の石けん不使用」
■アレルギー性鼻炎
1)「抗原の除去と回避」実施は忘れられつつある?
2)「日常生活に支障がない」レベルに症状コントロールできているのはわずか3割
3)根拠のない「民間療法の実施」も珍しくない
■喘息(小児・成人)
1)発作が月1回以上あっても2割弱が「発作予防薬を服用していない」
2)発作が月1回以上あっても3割弱が「発作治療薬を服用していない」
3)いまだに発作治療薬を予防薬(発作時以外で使う薬)として定期的に使っている
■食物アレルギー
1)アナフィラキシー既往でも「エピペン処方」は5割のみ
2)驚くことに「IgG 抗体陽性」で食物アレルギーと診断されるケースがある
3)いまだに「卵アレルギーを理由に鶏肉と魚卵を除去」ケースがある
今回の研究の代表者で、日本アレルギー学会理事長である斎藤博久氏は、これらの結果について、「ほとんどのアレルギー疾患はガイドラインに準拠した治療を徹底すれば、症状はほとんどなくなり、健常者とほぼ同じ程度の生活ができるまでにコントロールが可能な時代になっている」とし、ガイドラインに準拠した水準の治療を患者が安心して受けられるようにするために、日本アレルギー学会として、非学会員や非専門医に対しても門戸を開き、診療内容の向上に役立つプログラムを提供するとともに、専門医に対しても再教育プログラムの充実を図る考えを示した。
◎QLife
http://www.qlife.co.jp/