東北大学病院循環器内科の下川宏明教授らのグループは、狭心症の患者を対象にした新しい血管新生療法「体外衝撃波治療」を開発した。
我が国では、人口の高齢化や生活の欧米化により、狭心症や急性心筋梗塞などの虚血性心疾患に対しては、通常、薬物療法・カテーテル治療・バイパス手術が行われているが、これらの標準的治療のみでは治すことが難しい患者が増えてきており、新しい治療法の開発が望まれていた。
体外衝撃波治療は、20年以上前から尿路結石破砕治療として臨床応用されている治療法だが、下川教授らは、結石破砕治療に用いられている出力の約10分の1という弱い出力の衝撃波が血管新生をおこすことを発見し、低侵襲でかつ有効性の高い治療法を開発した。
治療風景
この画期的な治療法は全身麻酔や手術操作が一切不要で極めて非侵襲的な治療法であるだけでなく、非常に弱い出力の衝撃波を照射するため、治療に伴う副作用や合併症も認められないのが特長。更に非侵襲性であることから、必要があれば繰り返し行うことも可能だ。
治療は、仰向けに寝た患者の前胸壁に衝撃波発生装置を当て、治療装置に内蔵された超音波検査装置で心臓を観察しながら、虚血部位に照準を合わせて低出力衝撃波を照射。1回の治療で200発の弱い衝撃波を約50ヵ所に当て、治療時間は約3時間かかる。麻酔や鎮静剤の投与も不要で、覚醒下で治療を行うが、痛みはない。
衝撃波治療にかかる費用は、3回の治療(1クール)で26万5,500円(全額自費)だが、衝撃波治療以外の検査・入院費用については、保険適応(通常3割負担)となる。今回は、東北大学病院において50例の実施が承認された。
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