東京大学大学院薬学系研究科・薬学部は、7月24日、アルツハイマー症治療薬候補γセクレターゼ修飾薬の作動原理を解明したと発表した。
高齢化社会において大きな問題となっている認知症の多くを占めるアルツハイマー症は、アミロイドβタンパク質(Aβ)が脳に老人斑として蓄積することを契機に発症すると考えられており、特に凝集性の高いAβ42と呼ばれるタンパク質がその原因物質として注目されている。このAβを産生する酵素γセクレターゼの活性を制御し、Aβ42産生のみを抑える化合物γセクレターゼ修飾薬は、副作用のないアルツハイマー症治療薬として期待されているが、その作動原理は不明だった。
今回、東京大学大学院薬学系研究科の竹尾浩史大学院生、岩坪威教授(医学系研究科神経病理学分野)、富田泰輔教授らの研究グループは、共同で、フェニルイミダゾール型γセクレターゼ修飾薬の作動原理と作用部位を解明。これは、アルツハイマー症治療薬として期待されているγセクレターゼ修飾薬の開発において、大きな意義をもつ。
研究グループは、フェニルイミダゾール骨格を持つγセクレターゼ修飾薬がγセクレターゼを活性化していることを新たに発見した。また、このγセクレターゼ修飾薬は酵素サブユニットであるプレセニリンに直接作用していること、特に細胞外のループ領域に結合し、活性中心構造に影響を与えていることも見出した。この成果は、フェニルイミダゾール型γセクレターゼ修飾薬の作動原理と作用部位を世界で初めて同定したものである。
今回の発見に基づき、γセクレターゼ修飾薬の相互作用様式をさらに明らかにすることで、新たなアルツハイマー病治療薬のラショナルデザインに貢献し、その開発が加速することが期待されるという。
◎東京大学大学院薬学系研究科・薬学部
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