東京大学と独立行政法人科学技術振興機構は、認知症に関する遺伝子の機能を解明したことを米科学誌サイエンスの7月18日号に発表した。
研究を発表したのは、同大大学院理学系研究所の富岡征大助教と飯野雄一教授ら。記憶力に関わるたんぱく質であるカルシンテニンと、体内の血糖値を下げることで知られるインスリンが学習の制御にどのように影響しているのかを、簡単な記憶学習能力を持つ線虫を使って詳しく調べた。
その結果、インスリンを受け取るたんぱく質(受容体)には2種類あり、そのうちの大きいタイプは、記憶学習の際に、カルシンテニンの手助けによって、細胞内で神経細胞間接合部のシナプスまで運ばれることが判明した。
カルシンテニンは、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドベータを作り出すときや、レビー小体型認知症やパーキンソン病の患者の脳脊髄液に関与していることなどが指摘されているが、詳細なメカニズムはわかっていなかった。今回の発見により、インスリンが多様な機能を発揮するメカニズムや、カルシンテニンが神経細胞内でどのように働くかが明らかになったことは大きな成果だと言える。この成果が、認知症の治療、記憶や学習の基本的な仕組みの解明などに役立つことが期待される。
(画像はプレスリリースより)
◎東京大学(プレスリリース)
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2014/35.html